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追悼・石弘光氏〜「税制改革の渦中にあって」を再読しブロガーとしての初心を思い出す

時間・行動・お金をコントロールする術を、ブログでお伝えしています。税理士で逆算手帳・認定シニア講師のきむら あきらこ(@kimutax)です。

8月25日、経済学者の石弘光(いし・ひろみつ)先生が、ご逝去されました。石先生の著書は、大好きでした。

訃報のニュースを聞き、昼休みに久々に事務所に置いていた石先生の著書を手にとり拾い読み。

きむら

本書は、財政と税の関係について知るのに、おすすめの一冊です。そして私がブログを始めた頃の初心を、思い出しました。

著者・石弘光氏について

石先生は、一橋大学名誉教授で元税制調査会会長(00年~06年)という経歴の方。経済学者として非常に著名な方です。

ところが、氏を知っている人の中には、あまりいいイメージを持ってない方もいらっしゃるかもしれません。なぜなら、税制調査会会長職だった時、「サラリーマン増税の急先鋒」「増税請負人」などと言われ、批判されがちだったから。

2005年、私が旧ブログを立ち上げたのがちょうどその頃。

ブログには、節税について書いた方がウケはいいし、増税に対し意を唱えた方がキャッチーです。私も石先生の提言する税制のあり方について、ブログで批判めいたエントリーを書いたことがありました。

そんな折、この本に出会いました。

本と出会ったのが10年以上前のことなので、人に勧められたのか、自発的に購入したのかさえ定かではありません。が、読んで内容に感銘し、ずっと今まで、大切に手元に置いていました。

「税制改革の渦中にあって」は財政と税の関係について知ることができる本

石先生は、財政再建を重視する立場から消費税の引き上げを提言。

「誰も言えないなら、私が憎まれ役になっても、財政の危機を訴えよう」という気概を持って会長職にあたったようで、その愚直なまでに真摯な姿勢が、読んでいて伝わってきます。

具体的にどんな内容が書かれているのか、少しご紹介しましょう。

まず、この本は、税の専門家でない方にもおすすめできます。

「税」を扱った本と言っても、財政について書かれた本なので、税法の知識がない方でも読むことができます。

つまり、税金の計算のしかたや税法について学ぶ本ではなく、「財政と税」の考え方を学ぶことができる本なので、10年前の本だけど、内容は色あせていません。

財政学の入門として読むも良し。近代日本税制史として読むも良し。

税理士が読んでも、マクロな視点から「税」を見ることはあまりないので、色々な気づきが得られます。まさに、財政の専門家の知見が、濃縮された一冊です。

日本が思い切った税制改革に踏み込めない理由

この本を読んで得た最も大きな気づきは、最近、どうして些末でおかしな税制改正ばかりなのか、その理由がわかったことでした。

財政再建のためには、思い切った抜本的な改革が必要なのにも関わらず、与党も野党も選挙に勝つため、「増税」を打ち出すことができないし、政権を取れば取ったで、目立つ「増税」がしづらい。

でも、実情は、国庫は火の車。

だから政府は、マスコミが騒ぎにくい(報道しづらい)ところとか目立たないところで、小手先の増税を繰り返すしかありません。たとえば、10年以上前にあった「オーナー会社課税(特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入)」などはその典型です。

石先生は本書で、財政の問題をどんどん先送りし、真っ向から税制を変えることのできない日本の政治のヘタレっぷりについて、近代日本税制史から、どうしてそうなったのか、これでもかというくらいに丁寧に説いています。

小手先の増税で、どんどん歪んで複雑になる税法。増える国庫の赤字。

そのツケを次世代に残したくないという強い信念から、石先生は税制調査会会長時代に「増税」を提言していたのでした。

税制改革への2つの課題

では、小手先の増税に終始し、抜本的改革が進まないのは、政治家だけの責任なのでしょうか?

本書では、税制改革に向けて、政治以外に2つの課題をあげています。

私たちの課題

政治家が増税をなぜ打ち出せないのか。それについて石先生は

増税を決断するのは政治家、そして、その政治家を選ぶのは国民です。今こそ、国民には見る目が求められているのだと思います。

と説いてます。

具体的に言うと、大平正芳総理の売上税の頃から、増税を政策として打ち出すと、私たち(国民)はことごとく「NO」をつきつけてきたという事実。

つまり1つ目の課題は、私たちの課題です。タックスペイヤーとしての意識を持つこと、そして増税が避けられないとしたら、やみくもに「増税=NO」ではなく、税制の中身を判断する力を持つことが、私たち国民の課題です。

「税」を伝える側の課題

そして、2つ目の課題は、伝える側の問題。

石先生は「増税=悪」と煽るマスコミについて、非常に厳しく改善を求めています。マスコミの現状は、売れればいいの姿勢で、ポピュリズム(大衆迎合)に傾き、公正性を欠いていると(石先生自身が叩かれまくったせいでしょうか。マスコミに対する腹立たしい気持ちが本書全面に貫かれています・笑)。

確かに、国民が正しく「税」を理解するには、前提条件として、租税教育とマスコミの適切な報道が必須です。

つまり、抜本的な税制改革には、政治家・私たち(国民)・マスコミの三者の意識改革が、必要なのです。

ブロガー税理士ができること

この “「税」を伝える側の課題 ” については、税理士、特にブロガー税理士が果たす役割が、ささやかながらあると考えています。

国民一人ひとりが、税について持論を持つことができるようになるため、末端の役割として、税理士として、「税」をわかりやすくシンプルに語ることのできる存在になりたい。

あるべき税制の姿にについて、一人ひとりが持論を持つことができれば、選挙での判断も変わりますし、それが長い目で見て、税政を変える--日本を良くする第一歩。

私はブログを始めた頃、確かに、そんな秘めた熱い気持ちを、持っていました。

まとめ

石先生の訃報に際し、「税制改革の渦中にあって」を読み返し、10年前にそのような初心を持っていたことを、改めて思い出しました。その気持ちを忘れないために、ブログ記事にしました。

きむら

これからも、とっつきにくい税について、わかりやすく伝えることを心がけます!

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