こちらは、令和2年に相続が発生した方向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
令和2年の路線価が、7月1日に公表されました。
参考 路線価図国税庁今年の路線価は全国平均で前年比1.6%の上昇率でした。これで路線価は、5年連続で上昇し続けていることになります。
しかし、新型コロナウイルスの影響により、現在の不動産市況は落ち込んでおり、路線価が実態にそぐわない状況にもなっています。
税理士きむら
そして、高い路線価に基づいて相続税や贈与税の申告をしなくてはならない納税者に対して、何らかの救済措置はないのでしょうか?
今回は、そのあたりを解説していきます!よろしければ最後までお付き合いください。
公示価格を基にするから路線価も上昇傾向に
路線価については、実は当初から
「新型コロナウイルスの影響を反映していない価格となるだろう」
と言われていました。
仰ることも一理ありますよね。まずは、路線価決定の仕組みからお話しします。
まず、路線価公表に先立って、3月に公示価格が発表されます。
地価公示法という法律に基づいて、その年の1月1日時点の正常な価格を調査・公表する制度を地価公示といいます。この地価公示によって公表される価格が公示価格です。
この公示価格の令和2年分は、全国全用途平均が5年連続の上昇となり、上昇幅も4年連続で拡大する結果となりました。
この公示価格、「一物四価」とも「一物五価」とも言われている土地の価格(『実勢価格』『固定資産税評価額』、『相続税路線価』『基準地標準価格』など)の基礎になっています。
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このように、土地の価格はその利用目的が異なるごとに設定されているものの、公示価格がそれぞれの価格の根幹になっています。
だから、土地の「四価」「五価」は、公示価格にリンクしています。毎年7月1日に公表される路線価は、公示価格の80%程度になります。
つまりは、公示価格は今年の1月1日時点の価格。そしてそれに連動している路線価も、1月1日時点の価格を基にしているから、昨年より上昇しているし、コロナ禍の影響を受けていないのです。
路線価の基礎知識 〜土地の評価のしかた・今や過去の路線価の探し方史上初!救済として導入予定の補正措置
しかし、新型コロナウイルスの影響を受け、土地の実勢価格(地価)は降下。現在は「地価よりも路線価の方が高い」というケースもありそうです。
そうなると、路線価をもとに計算される相続税や贈与税は、地価より割高ということになります。相続などで取得した土地を売却して納税資金にするつもりの納税者にとっては、かなり税負担が重いことになります。
そこで国税庁は救済措置として、地価が下落して路線価を下回るような場合に、地域を市区町村などに区切って補正率を出して、路線価に掛け合わせることで減額修正ができる方法を検討しています。
まだ詳細は公表されていませんが、2020年を上半期(1~6月)と下半期(7~12月)を区切って路線価と地価を比べ、地価が20%以上下落して路線価よりも下回った地域を対象にして、補正率を出すようです。
この補正率が導入された場合、年の前半と後半のどちらで亡くなったかにより、路線価に違いが出ることになる可能性があります。
何といっても補正率が導入されたとしたら史上初ですから、具体的にどのような方法になるのか、詳細が待たれます。
■ スポンサー広告 ■どうなる?令和2年1月に亡くなった人の相続税申告
そしてこの補正措置の公表時期ですが、早ければ10月頃と言われています。
そうなると1月に亡くなった人の相続税申告には、ギリギリのタイミングです。
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まずは補正率が発表される前に申告を済ませ、その後、補正率が明らかになった時点で申告内容を修正する「更正の請求」を行うというのが、対処法の1つとなります。
また、所得税の確定申告の時と同じように、申告期限の延長措置なども出るかもしれません。
詳細が決まり次第、このブログでもお伝えしますが、令和2年になって相続が発生された方は路線価で申告するのはちょっと待ったほうがよいでしょう。
申告するタイミングも含めて税理士や税務署に相談することをおすすめします。
まとめ
7月1日に路線価が公表されました。路線価は「1月1日現在」の地価を反映した公示価格の約8割ですから、新型コロナウイルスの影響を受ける前の価格となっています。
税理士きむら