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こちらの記事は、「親が元気なうちに相続の話をしておきたい」「でも、切り出し方がわからない」「財産目当てだと思われたくない」とお考えの方向けです。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ( YouTube)です。
親が元気なうちに、一度は相続の話をしておいた方がいい。
頭ではそう分かっていても、「財産をあてにしていると思われたらどうしよう」と、なかなか切り出せない方も多いのではないでしょうか。
実は、親に相続の話を切り出すときには、心得ておきたいコツがあります。
この記事では、親が拒否反応をおこさずに話を始める方法を、具体的にわかりやすく解説します。
相続について話す大前提について
大前提として、相続に限らずですが、自分が知りたいことだけ話すのは良いことではありません。
親がどう感じるかも考えながら、相続の話をする目的を整理しておくことです。
子どもとしては、財産の内容や相続税が気になるかもしれません。
でも、親にとっては、自分が亡くなった後の話を突然されると驚きます。
結果、こちらに悪気がなくても、言い方や切り出し方によっては、身構えさせてしまうことがあります。
ですから、自分の心配を解消することよりも、親の安心につながる話にできないか、まず考えておきましょう。
相続の話を切り出す前に、「この話が、親の今後の安心にどうつながるのか」をぜひ一度考えてみてください。

コツ①:親のこれからの暮らしから話す
1つ目のコツは、相続の話ではなく、親のこれからの暮らしから話すことです。
まずは、親がこれからどんな暮らしをしたいのか、聞いてみましょう。
親にとって、相続は自分が亡くなった後の話ですから、いきなり相続税や財産の話をされても、前向きに考えにくいことがあります。
一方で、これからどこで暮らしたいのか。
介護が必要になったとき、どのように過ごしたいのか。
こうした話であれば、親自身のこれからに関わることです。
親が望む暮らしを実現するために、住まいやお金について少しずつ確認していく。
この順番なら、相続の話にも自然につながります。
こんな声かけが自然です
たとえば、「これからも、できるだけこの家で暮らしたい?」と聞いてみます。
そこから、「もし入院したときは、誰に連絡してほしい?」と話を広げることもできます。
注意したいのは、親の希望を聞くふりをして、すぐに預金や不動産の話へ持っていかないことです。
質問攻めになると、親も身構えてしまいます。
相続という言葉を出さなくても、話は始められます。

コツ②:自分の「背中」を見せる
2つ目のコツは、親に聞く前に、自分の準備を先に話すことです。
仕事ができる上司と同じで、「自分の背中を見せる」ようなイメージです。
親にいきなり「通帳はどこ」「遺言は書いている」と聞くと、調べられているように感じることがあります。
そこで、自分も保険や大切な書類を整理し始めたと、先に話してみます。
相続や終活は、親だけが考えるものではありません。
自分も同じように準備していると伝えることで、一方的に親へ迫る雰囲気を和らげることができます。
こんな声かけが自然です
「私も最近、保険や通帳を整理し始めたんだ」
「自分に何かあったとき、家族が困らないようにしておこうと思って」
「お父さんたちは、何か準備している?良かったら参考までに教えて」
このような流れで聞いてみるといいです。
ただし、「私は全部準備したのに、お父さんたちは何もしていないの?」という言い方は避けてください。
準備の度合いを比べる話になると、親を責めるように聞こえてしまいます。
もう一つ、絶対にやってはいけないのが、準備していないのに、したふりをすることです。
まずは自分自身の相続の準備や終活にきちんと取り組んだうえで、親に声をかけてください。
自分の話から始めれば、親も答えやすくなりますし、自分自身の相続について考えるきっかけにもなります。

コツ③:ニュースや身近な出来事を話のきっかけにする
3つ目のコツは、ニュースや身近な出来事を、話のきっかけにすることです。
家族の話をいきなりせず、芸能人の相続ニュースやテレビ番組、知人の体験は、相続の話を始めるきっかけになります。
最初から「うちの相続はどうするの」と聞くよりも自然ですし、セミナーや専門家から聞いた話を紹介する方法もあります。
子どもの意見として押しつけるのではなく、こんな考え方もあるらしいと伝えやすいです。

こんな声かけが自然です
「テレビで、有名人の相続トラブルを聞いていたら、他人事とは思えなくなって。」
「セミナーで税理士さんが、『相続対策には、親が元気なうちだからこそできることが多い』って言ってたよ。」
このくらいの温度感で十分です。
注意点としては、親を不安にさせるために、失敗談を大げさに話さないことです。
「何もしないと財産が全部税金に取られる」といった極端な言い方も避けましょう。
身近な人の話を使う場合も、もちろん作り話はいけません。

コツ④:話すタイミングと人数を選ぶ
4つ目のコツは、話す内容だけでなく、タイミングと人数を選ぶことです。
家族が集まったからといって、全員の前で話す必要はありません。
お盆や年末年始は、家族が集まり、将来について話しやすい時期です。
ただし、食卓で突然相続の話を始めると、親はみんなから責められているように感じることがあります。
兄弟姉妹が一斉に質問をすれば、家族会議ではなく、取り調べになってしまいます。
まずは、親が話しやすい相手が一人で切り出す方がよいでしょう。
親の誕生日や年齢の節目、実家の片付けやリフォームも、将来の話をするきっかけになります。
こんなタイミングが自然です
例えば、お盆の食事中ではなく、翌朝に二人でお茶を飲んでいるときに話す。
実家を片付けながら、「大事な書類は、どこにまとめている?」と自然なタイミングを選びます。
ただし、帰省してすぐの疲れているときや、お酒が進んだ後は避けましょう。
家族の意見がまとまっていない状態で、兄弟姉妹がそれぞれ別の話をするのもおすすめできません。

コツ⑤:一度で全部決めようとしない
5つ目のコツは、一度の話し合いで、全部決めようとしないことです。
まずゴールは、相続の結論を出すことではなく、次に話すきっかけを残すこと。
相続税、遺言、実家、預金、保険、介護。
気になることを一度に聞こうとすると、親も疲れてしまいます。
特に、これまで相続の話をしてこなかったご家庭では、一回で全部決めるのはまず無理です。
最初は、大事な書類の場所や、入院したときの連絡先など、一つ確認できれば十分ですので、少しずつ話を重ねていきましょう。
こんな声かけが自然です
「この家を将来どうしたいか、また聞かせて。」
「今日は、通帳や保険証券をどこに置いているかだけ教えて。」
このくらいで切り上げても構いません。
親が答えたくなさそうなときに、無理に聞き出さないことです。
こちらが焦って結論を迫ると、次から話を避けられてしまうこともあります。
一つ確認できれば、それで十分前進です。
話を終わらせることより、また話せる関係を残すことを大切にしてください。

親に話す前に、兄弟姉妹で目的を共有する
ここまで、親に相続の話を切り出す5つのコツをお伝えしました。
ただ、親に話す前に、ぜひ確認してほしいことがあります。
それは、兄弟姉妹の考えがバラバラになっていないか、ということです。
実際の相談現場では、
- 長男は相続税を減らしたい。
- 長女は実家を残したい。
- もう一人は、親の介護や生活費が心配。
このように、子ども側の目的が違っていることは珍しくありません。
その状態で、それぞれが別々に親へ話をすると、親は誰の話を信じればいいのか分からなくなってしまいます。
場合によっては、「子どもたちが私の財産を巡って動き始めた」と、不安にさせてしまうこともあります。
ですから、親に話す前に、兄弟姉妹の間で話し合い、「まずは親の希望を確認しよう」という目的だけでも共有しておきましょう。
そして、最初に話を切り出す人を一人に決めておく。
相続税を減らすことより先に、親が安心して話せる環境を整えること。
これも、とても大切な相続対策です。

まとめ
親に相続の話を切り出すときのポイントは、次の6つです。
①相続の話より先に、親のこれからの暮らし
②質問する前に、自分の準備を見せる
③ニュースや身近な出来事を使った自然な切り出し
④話しやすいタイミングと人数選び
⑤一度で全部決めず、次につなげる意識
⑥親に話す前の、兄弟姉妹の足並み
相続の話し合いで大切なのは、結論を急ぐことではありません。
親が安心して話せる関係を、少しずつつくっていきましょう。
最後に話し始めるタイミングについて、お伝えします。
親が「もう自分も先は長くない」となってから切り出しては、遅いのです。
認知症が進むと、相続対策のような法律行為ができなくなることもあります。
だからこそ、親が元気なうちに、コツコツと時間をかけて話していくことが大切です。


