こちらの記事は、相続税の節税対策として毎年贈与をお考えの方、または「毎年贈与すると定期贈与になって危ない」と聞いて不安になっている方向けです。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ( YouTube)です。
先日、こちらの動画にいただいたコメントをご紹介します。
「毎年100万円ずつ贈与すると、定期贈与(最初から2人の孫に500万円ずつ贈与する予定だった)とみなされ、贈与税がかかると聞きました。こちらに関してはどういう見解でしょうか。定期贈与とみなされないコツがあれば教えてください。」
年間110万円以内なら贈与税はかからないはずなのに、毎年コツコツ贈与していたら贈与税がかかる!? とびっくりされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ネットで「定期贈与」を調べると「キケン!税務署に見つかると課税される!」という情報があふれていて、不安になる方も多いと思います。
そこで今回は毎年同額を贈与する「定期贈与」がなぜ危ないのか、そしてその危険性を回避するための具体的な方法を解説します。
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定期贈与とは?なぜ危険なのか
まず、定期贈与について整理しておきましょう。
定期贈与とは、毎年一定の金額を贈与することがあらかじめ決まっている贈与のことです。
たとえば、「1,000万円を100万円ずつ、毎年10年間にわたって贈与する」とあらかじめ約束した上で贈与を行った場合、これは定期贈与にあたります。
毎年の贈与金額は110万円以下、つまり贈与税の基礎控除の範囲内ですよね。でも、この場合はどうなるかというと…
「1,000万円を分割で贈与する約束をした」とみなされ、1,000万円全体に対して贈与税が課税されてしまうのです。
これは国税庁のホームページにも明記されています。もし祖父母が成人した孫に1,000万円を贈与したとみなされれば、贈与税は177万円にもなります。
コツコツ節税のつもりが、かえって大きな税負担につながってしまう。それが定期贈与の怖さです。
▼贈与税の基礎控除(年間110万円)や計算方法については、詳しくはこちらもあわせてご覧ください。
定期贈与とみなされないための3つのポイント
では、どうすれば定期贈与とみなされずに、毎年贈与を続けることができるのでしょうか。
実は国税庁のホームページには、次のように書かれています。
「定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の贈与財産の価額の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません」
つまり、「たまたま毎年贈与をおこなっている」という実態を証明できれば、定期贈与にはなりません。
この考え方をもとに、具体的な3つのポイントを解説します。
■ スポンサー広告 ■ポイント①「定期金給付契約」にしないこと
まず大前提として、あらかじめ「総額○○円を毎年○○円ずつ贈与する」という取り決めをしないことが重要です。
「定期金給付契約」とは、定期的に分割で金銭を受け取る契約のこと。
「1,000万円を10年かけて毎年100万円ずつ贈与する」という約束がある場合は、まさにこれにあたります。
「じゃあ、口約束だけにして贈与契約書を作らなければいいの?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、民法では契約は書面がなくても口約束でも成立します。
税務調査が入ったとき、調査官に「毎年100万円を10年間贈与していますね。そういうお約束をされたんですか?」と聞かれて「そうです」と答えたら…それだけで、1,000万円に対して贈与税が課される可能性があります。
「最初から総額を決めて分割贈与する約束をしない」ことが、定期贈与を避けるための絶対的な大前提です。
ポイント②毎年贈与契約書をその都度交わすこと
次に大切なのが、毎年その都度、贈与契約書を作成することです。
先ほど、口約束でも契約は成立すると言いましたが、だからこそ書面での契約書が重要になります。贈与契約書を作成することで、贈与者(財産を渡す人)と受贈者(財産を受け取る人)双方の意思表示が明確になります。
また、贈与をおこなった実態を書面で補足できるため、「毎年たまたま贈与をしている」という証拠がより固まります。
面倒に感じるかもしれませんが、これは非常に重要なステップです。
「贈与契約書 テンプレート」で検索すると、インターネット上にひな形が多数掲載されています。現金の贈与であれば、そこまで難しい内容ではありませんし、印紙を貼る必要もありません。
毎回必ず作成する習慣をつけておきましょう。
ポイント③銀行振込で贈与をすること
3つ目のポイントが、銀行振込で贈与をおこなうことです。
現金の手渡しで贈与をしてしまうと、その年に贈与をおこなった証拠が残りません。
贈与契約書があっても、実態がなければ税務署に認めてもらえない可能性があります。
また、よく聞かれるのが「子どもや孫の名義で新たに口座を作り、そこに預金を移せばいい」というケースです。
しかし、子どもや孫本人が普段使っていない口座に振り込んでも、生前贈与は成立しません。贈与として認められるためには、受贈者が普段から実際に使っている口座へ振り込む必要があります。
毎年贈与契約書を作成し、受贈者が普段使っている口座へ銀行振込で贈与する。この2点をセットで徹底してください。
定期贈与にまつわる都市伝説
ここで、定期贈与に関してネット上でよく見かける「都市伝説」についてお話しします。
「定期贈与とみなされないために」として、こんな方法が紹介されているページをよく見かけます。
- 毎年贈与する金額を変える
- 贈与をする日付を毎年変える
「たまたま毎年贈与をおこなっている」体を装うための工夫とのことですが…実際のところ、そこまでする必要はありません。
たとえば、誕生日に毎年贈与するのは、むしろ自然な「たまたまの贈与」ではないでしょうか。逆に、金額や日付をあえて変えるほうが不自然に見えることもあります。
定期贈与とみなされないためには、贈与契約書を毎年その都度作成し、銀行振込で贈与する。これで十分です。
贈与契約書でやってはいけないこと
最後に、絶対にやってはいけないことをお伝えします。
後付けで贈与契約書を作成すること(バックデート)は絶対にNGです。
贈与契約書の日付を遡って作成する行為は、税務署の調査官に簡単に見破られます。
また、面倒だからといって、今後の分も含めて未来の日付でまとめて贈与契約書を作成することもNGです。
これらは定期贈与とみなされる可能性があるだけでなく、文書偽装行為・仮装隠蔽行為として、非常に重いペナルティが課される可能性があります。
節税対策として贈与を活用することはとても有効です。ただし、正しい方法で、誠実に実行することが何より大切です。くれぐれもご注意ください。
まとめ
今回の内容をまとめます。
定期贈与とみなされないためには、次の3点を守ってください。
①「定期金給付契約」にしないこと
総額や回数をあらかじめ約束せず、毎年独立した贈与としておこなうことが大前提です。
②贈与契約書をその都度交わすこと
面倒でも、毎年必ず贈与契約書を作成しましょう。ひな形はネット上で入手できます。
③銀行振込で贈与をすること
受贈者が普段使っている口座へ振り込み、贈与の実態を記録として残しましょう。
相続税の節税対策として贈与を活用したい方、または「自分の贈与方法が定期贈与になっていないか心配…」という方は、個別のご相談もお受けしていますので、お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!



