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贈与税と相続税の違い~税金の成り立ちからわかりやすく解説【庶民のための相続対策】

こちらの記事は、「相続税と贈与税の違いがよくわからない」「どちらが得なのか知りたい」「税金の仕組みをわかりやすく理解したい」とお考えの方向けです。

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ( YouTubeです。

「相続税って、なんとなく聞いたことはあるけど…贈与税との違いって何?」と思ったことはありませんか?

実は、相続税と贈与税はセットで理解するとグッとわかりやすくなります。この記事では、税金の成り立ちからひも解いて、二つの税金の違いをシンプルに解説します。

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相続税と贈与税は「双子のような税金」

相続税と贈与税はなんとなく似ているようで、何が違うのかよくわからない、という方は多いと思います。実は、この二つはまるで双子のような、切っても切れない関係にある税金なのです。

もともと、相続税は「亡くなった人から財産を受け継いだときにかかる税金」として誕生しました。ところが、相続税だけが存在すると、「生きているうちに子どもや孫に財産を渡してしまえば、相続税を払わなくて済む」という抜け道を使えてしまうことが問題でした。

そこで登場したのが贈与税です。贈与税は、この抜け穴をふさぐ役割を担うために作られた税金。「亡くなってからでも、生きているうちに渡しても、財産の移転にはきちんと課税する」というしくみが、これによって完成しました。

つまり、相続税と贈与税は、どちらか一方だけでは成り立たない、対になった税金なのです。この大前提を知っておくだけで、二つの税金の違いが格段にわかりやすくなります。

では、この「双子のような税金」は、いつ、どんな背景のもとに生まれたのでしょうか。歴史をたどってみると、それぞれの税金が誕生した理由がよりクリアに見えてきます

相続税と贈与税の歴史:いつ、なぜ生まれたのか

相続税の歴史—明治時代に誕生した「戦費調達」の税

日本に相続税が誕生したのは、明治38年(1905年)のことです。当時、日本は日露戦争の真っただ中であり、莫大な戦費を賄うための新たな財源として、相続税は生み出されました。

もともと日本には、財産を受け継ぐことへの課税という考え方はほとんどありませんでした。しかし「大きな財産を引き継ぐ人には、相応の負担をしてもらおう」という発想のもと、相続税制度が設けられます。

その後、大正・昭和にかけて税率や課税のしくみが何度も見直されました。特に第二次世界大戦後は、それまでの「家督相続(長男がすべての財産を受け継ぐ)」から、民法改正によって「法定相続分に応じた分割相続」へと大きく転換。これに合わせて相続税のしくみも現代的な形へと刷新されています。

「富の一極集中を防ぎ、世代をまたいだ財産の再分配を促す」—これが、現代の相続税に根付いている根本的な考え方です。

贈与税の歴史:昭和25年のシャウプ勧告で独立した税に

贈与税が独立した税金として登場したのは、昭和25年(1950年)のことです。きっかけは、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の要請で来日したアメリカの税制専門家カール・シャウプ博士が提出した「シャウプ勧告」という税制改革の提言書でした。

それ以前も、生前に財産を贈与した場合には相続税の枠の中で課税する仕組みがありました。しかし当時の制度は非常に複雑で、抜け穴も多く、十分に機能していなかったと言われています。

シャウプ勧告をもとに税制が整理された結果、「生きているうちの財産移転には贈与税、亡くなった後の財産移転には相続税」というすっきりした二本立ての体系が確立されました。贈与税は相続税の補完として独立し、「生前に財産を移しても、ちゃんと課税できる」しくみが整ったのです。

近年の改正:令和5年の大きな転換点

相続税・贈与税の仕組みは、その後も時代に合わせて改正が続けられています。特に令和5年(2023年)の税制改正は、近年でも大きな転換点として注目されました。

主な変更点は2つあります。ひとつは、亡くなる前の贈与が相続財産に加算される期間が「3年以内」から「7年以内」に延長されたこと(段階的に移行)。もうひとつは、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されたことです。

「昔のルールのままで節税対策をしていた」という方は、現在の制度と照らし合わせて見直しが必要なケースもあります。税制は生き物です。最新の情報をもとに、ぜひ一度税理士にご相談ください。

こうした歴史的な流れを知ると、相続税と贈与税が「双子のような税金」として並んで存在している理由が、自然と腑に落ちてきますよね。

成り立ちを理解したところで、次は具体的な中身に目を向けてみましょう。二つの税金は、どんな点が異なるのか4つのポイントに絞って、わかりやすく解説します。

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相続税と贈与税、4つの違い

違い① 財産をもらうタイミング

最も基本的な違いは、財産を受け取るタイミングです。

  • 相続税:亡くなってから財産をもらったときにかかる税金
  • 贈与税:生きているうちに財産をもらったときにかかる税金

「亡くなった後にもらったら相続税、生きているうちにもらったら贈与税」—これがいちばんシンプルな覚え方です。

財産の種類は問いません。現金・預貯金はもちろん、不動産(土地・建物)、株式・投資信託、車、骨とう品なども対象になります。「誰かから何かをもらったとき、それが亡くなった後か、生前かで税金の種類が変わる」と覚えておきましょう。

違い② 申告の期限

申告のタイミングも二つの税金で大きく異なります。

  • 相続税:亡くなってから10カ月以内に申告・納税
  • 贈与税:財産をもらった翌年の3月15日までに申告・納税

相続税の10カ月という期限は、一見長いようで、実際にはあっという間です。亡くなった直後は葬儀や各種手続きでバタバタし、その後も遺産の全体像を把握したり、相続人全員で分割の話し合いをしたり、やることは山積みです。

「そのうち税理士に相談しよう」と後回しにしていると、気づいたときには申告期限まで数カ月しかない、というケースも珍しくありません。相続が発生したら、できるだけ早めに専門家に相談することをおすすめします。

一方、贈与税の申告期限は毎年2月1日〜3月15日の確定申告シーズンと重なります。基礎控除(110万円)を超える贈与を受けた場合には、翌年3月15日までに忘れずに申告しましょう。

違い③ 計算の複雑さ

計算の難易度にも、二つの税金で大きな差があります。

  • 相続税:計算が複雑。財産の評価方法が難しく、専門家のサポートが必要なケースが多い
  • 贈与税:計算が比較的カンタン。「もらった金額 - 110万円(基礎控除)」から税率をかけるシンプルな構造

相続税の計算が難しい大きな理由のひとつは、財産の「評価額」を正しく算出しなければならないことです。

たとえば土地は、路線価や形状・面積・利用状況などをもとに評価するため、専門的な知識が欠かせません。非上場株式の評価ともなれば、さらに複雑になります。

また、相続税は「誰がどの財産を受け取るか」という遺産分割の内容によっても税額が変わります。配偶者控除や小規模宅地等の特例など、使える特例を正しく適用できるかどうかで、税額に数百万円単位の差が出ることもあるのが相続税の怖いところです。

一方、贈与税は基本的に「もらった金額から110万円を引いて、税率をかける」だけ。仕組みを理解すれば、ご自身で計算できる場合もあります。

贈与税の計算方法を税理士がわかりやすく解説【初心者向け】贈与税の計算方法を税理士がわかりやすく解説【初心者向け】

違い④ 税金の重さ(税率)

「贈与税の方が相続税より税率が高い」—これは、多くの方が意外に思うポイントです。

  • 相続税:税率は比較的軽め(最低10%〜最高55%、基礎控除が大きい)
  • 贈与税:税率は相続税と比べると重め(最低10%〜最高55%、ただし基礎控除は110万円のみ)

税率の最高税率はどちらも55%で同じですが、基礎控除の大きさが全く違います。
相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という大きな基礎控除があります。たとえば配偶者と子ども2人がいる場合、4,800万円までは相続税がかかりません。

一方、贈与税の基礎控除は年間110万円。同じ金額の財産を移すにしても、少しずつ長期間にわたって贈与するか、まとめて相続で渡すかによって、税負担は大きく変わります。「贈与のほうが税金が安くなる」とは一概にいえないのはこのためです。

相続税と贈与税、どちらがお得?

「じゃあ、相続税と贈与税、結局どっちで財産を渡すのがお得なの?」これはよく聞かれる質問です。

答えは、「一概にはいえない」です。どちらが有利かは、財産の総額・家族構成・渡す相手・渡すタイミング・現行の税制など、さまざまな条件によって変わります。

ただし、考え方の基本として押さえておいてほしいポイントがあります。

まず、相続税がかからないご家庭では、無理に生前贈与をする必要はありません。前述のとおり、相続税には大きな基礎控除があります。財産の総額が基礎控除以下であれば相続税はゼロ。むしろ贈与税を払ってでも生前に渡す意味はほとんどありません。

一方、相続税がかかりそうなご家庭では、計画的な生前贈与が節税につながることがあります。毎年110万円以内の贈与(暦年贈与)をコツコツ続けることで、相続財産を少しずつ減らし、将来の相続税負担を抑えられる可能性があります。

ただし、ここで注意が必要です。亡くなる前の一定期間(令和5年改正後は最大7年以内)の贈与は、相続財産に加算されてしまいます。「亡くなる直前に慌てて贈与した」では、節税効果が薄れてしまうのです。相続対策は、元気なうちから時間をかけて行うことが重要です。

また、相続時精算課税制度という選択肢もあります。これは2,500万円まで贈与税なしで財産を渡せる(超えた分は20%課税)かわりに、将来の相続時に贈与財産を相続財産に持ち戻して計算するしくみです。令和5年の改正で年間110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が改善されました。

「どちらが得か」は、ご家族の状況によって千差万別。「なんとなく贈与しておけばいい」という考えで動いてしまうと、かえって税負担が増えてしまうケースもあります。まずは現状を整理したうえで、専門家に相談することをおすすめします。

▼相続時精算課税制度はこちらの動画で詳しく解説しております

まとめ:相続税と贈与税の違いをおさらい

この記事では、相続税と贈与税の成り立ちから、4つの違い、そして「どちらがお得か」という視点まで解説してきました。最後に要点を整理しておきましょう。

  • 二つは双子のような税金:贈与税は相続税の「抜け穴をふさぐ」ために生まれた、対になる税金
  • タイミング:亡くなった後にもらったら相続税、生きているうちにもらったら贈与税
  • 申告期限:相続税は亡くなってから10カ月以内、贈与税はもらった翌年の3月15日まで
  • 計算の複雑さ:相続税は財産評価が難しく専門家が必要なケースが多い、贈与税は比較的カンタン
  • 税率:基礎控除が大きい分、相続税のほうが有利になるケースが多い
  • どちらがお得か:財産の規模や家族構成によって異なり、一概にはいえない

相続税と贈与税は、切り離して考えるより「セットで理解する」ことで、はじめて全体像が見えてきます。そして、どちらが有利かを判断するには、ご家族の財産状況を踏まえた個別のシミュレーションが欠かせません。

「うちの場合はどうすればいいの?」と思ったら、ぜひお気軽に税理士にご相談ください。難しいことを難しいまま放置せず、一緒に整理していきましょう。お一人おひとりの状況に合わせて、わかりやすくご説明します。