YouTube【小さな相続専門TV】

人を雇用するあなたに伝えたい、経営者としての5つの心構え

経営者A子の失敗

「まさか、私がこんなことで苦労するとは思わなかった。」

税理士事務所を開業して2年のA子。学生の頃から友人が多く、年上からは可愛がられ年下からは慕われ、創業準備をしていた頃
「A子の下なら働きたい」
と、何人もの友人がそう申し出てくれた。

その結果、元同僚で親友だったB美が、スタッフとして入ってくれることになった。

A子は自分が働いていた税理士事務所の所長がワンマンで、従業員の意見に耳を貸さないことに辟易していた。

だから
「私はそうなるものか」
と強く思っていた。

いや、そうなるわけがない。私が所長になれば、従業員とのコミュニケーションも良く、誰よりもうまくやれるだろう!そういった自信さえあった。

ところがどうだろう。

最初、あんなに喜んで入社してくれたB美は、半年持たずに退職願を出した。

退職理由にはありきたりのことが書かれていたが、B美は入社して2、3ヵ月たった頃から、あきらかにA子の指示をふて腐れて聞いている素振りがありありと見えるようになった。

そうなってから、A子はB美のご機嫌をうかがったり、スタバで飲み物などを買ってきたりして「気遣い」したのだが、それくらいでB美との関係が修復することはなかった。

B美から退職願を突き付けられてしばらくは、初めての従業員が早期退職するという屈辱と、親友を失った悲しみから立ち直ることができず、日常の業務に支障をきたしたほどだった。

その後もスタッフを何名か雇ったのだが、定着率は芳しくない。税理士事務所という職業柄、所内の人間がコロコロ変わるようでは顧問先にも迷惑がかかる。

A子は仕事のあと、毎晩お酒を煽りながら自問自答する。

「いったい私の何がダメだっていうのよ!!」

人を雇用する上で大切な心構え5つ

実はこの「A子」、税理士事務所を開業したばかりの私のことをそのまま書きました。

今から考えると、私は人を雇用するということについて、色々と甘かったと反省しています。

そこで、私の失敗から学んだことにプラスして、その後、多くの経営者を見てきて学んだ「人を雇用する上で大切な心構え5つ」について、ブログに書いてみます。

1. 人に好かれる能力と経営者として従業員をまとめる能力は、まったく別物

A子(私)の最大のあやまちは、友人も多く誰からも好かれる自分の性格こそ経営者向きだと考えたことです。

ところが経営者の能力は、まったくそれとは別もの。会社は仲良しクラブではありません。毅然と従業員に接しなくてはならない局面が、多々あります。

従業員をいつも罵倒し手足のように使うのは論外ですが、
「顧客の利益にコミット出来ない者は去れ」
くらいの強い気構えとプロ意識こそが、実は従業員から尊敬され、人を引っ張る力となるのです。

税理士きむら

気遣いやご機嫌伺いは、友人や仲間との交際では大切ですが、経営者が従業員に対して過度にびくびくするのは、逆効果。『ポリシーのない経営者だ』と失望されることになりかねません。

2. 「従業員は最も身近なビジネスパートナー」という意識を常に忘れない

人を雇用したての経営者がよく漏らす不満が、「従業員を雇ったらかえって仕事が増えて困る」ということ。

確かに、最初は手取り足取り教えないといけませんが、その際に、「かえって仕事が増えて困る」という気持ちで接していると、従業員に必ずその気持ちが伝わります。

従業員も「何らかの形でこの会社の役に立ちたい」と必死なのに、社長(上司)がそういった気持ちで接していては、モチベーションは低下してしまいます。

「従業員は自分の仕事を手伝い、助けてくれるビジネスパートナー」という意識を常に持つと同時に、自分自身が新しい仕事や職場に就いたばかりの頃を思い出し、その時の心細さと、どういう態度を社長(上司)からとられた時にやる気を失ったかを思い起こしながら、従業員に接することを心がけるようにしてみましょう。

税理士きむら

開業当時の自分自身を振り返ると、忙しさを従業員のせいだと思い、つっけんどんに接していたなと反省しています。

3. 昔の価値観を捨てる

「自分の時はもっとガマンしていた」
「仕事を教えてもらえる立場だから、耐えた」
と、自分が若かった頃の従業員のありようを「是」と考える方も多いですが、時代は変わってきています。

ノミニュケーションを避ける、LINEやメールで要件を伝えてくる…といった形式面に眉をひそめたりカリカリしたりでは、その従業員の本質(良さ)に気づかないこともあります。

柔軟な気持ちで接し、仕事の成果といった本質面で、従業員の行動の是非を判断するようにしましょう。

税理士きむら

当時の私は、メールで休みを伝えてくることや、挨拶の際に目を見ないこととかが、許せなかったりしたんですよね。偏狭だったなあと思っています。

 

このあとの2つの心構えは、私自身の失敗からいうよりは、20年間多くの経営者を見てきて、感じていることです。

4. 労務の知識を最低限学んでおく

最近は従業員の権利意識が強くなり、会社が労働法規に抵触するような行為(残業代不払いや有給休暇の取り扱いの間違い等)をした場合、それを不満に思う傾向が非常に強いです。

従業員に仕事の面で毅然とした態度で接するためにも、後ろ指を指されないよう、最低限の労務の知識は身に着けておくようにしましょう。

5. 従業員のグチは経営同士の集まりでは言わないこと

従業員に対するフラストレーションがたまると、経営者同士で集まったとき、従業員のグチ大会になることが多いですが、これはやめたほうがいいです。

まず、そういった席でグチっても、問題解決には繋がりません。経営者仲間の多くは、あなたの経営には無関係・無責任だからです。

そして、そういった場では、つい話を面白おかしく大げさにしてしまいがちです。大げさに話しているうちに、実態以上に従業員のことを、「使えない」「どうしようもない」と思い込んでしまうことでしょう。

だから、経営者間で従業員のことをグチるのは、無益どころか有害です。やめましょう。

従業員のことで悩んでいるなら、グチではなく信頼できる人相手に、サシで「相談」をするべきです。

■ スポンサー広告 ■

編集後記

人を雇う上での悩みは、会社経営においてお金の悩みと同じくらい根深いものです。

会計や税務のことはある程度知識を身に着けた上で起業される方も増えてきましたが、「人を雇用する」ことについて、深く考えずに起業してしまう方は、まだまだ多いように思います。

税理士きむら

これから創業する方はもちろん、現在会社経営を行っている方も、「人を雇用する」ということについて、考察・勉強・情報収集するという姿勢を持つようにしましょう。

このブログ記事が、起業し、人を雇用することを想定されている方にとって、何かしらの気づきになれば幸いです。