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交通系ICカードの「チャージ代」は経費で落とせない!確定申告に向けて知っておきたい交通費の正しい経理処理

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。

便利な交通系ICカード。仕事に使っている方も多いですよね。

そこでありがちな処理が、チャージ代を経費として落とすこと。でも、これって正しい処理ではないんです。税務調査で否認される可能性があります。

税理士きむら

チャージ代を経費で落とすとなぜまずいのか。その理由と、どのように処理するといいのか、お話しします!

チャージした金額を交通費で落とす。その処理、間違ってますから!

スムーズに乗車できるパスモ・スイカなどの交通系ICカード。私鉄でもバスでもJRでも相互に使え、これで買い物できるお店も増えているし、外回りをしているビジネスパーソンには、必須ですよね!

今回は、交通系ICカードの経理処理についておはなしします。というのも、経理処理をする際、ぜひ気をつけて頂きたいことがあるんです。

というのも、多くの事業主や中小企業が、間違った処理をしています!

たとえばスイカに5,000円チャージをしたとしましょう。

(借方)旅費交通費 5,000円/(貸方)現金預金 5,000円

このように、チャージ金額をそのまま落としていませんか?

え!この処理が、もしや間違いなのですか?

社長

税理士きむら

そうなんです!なぜ間違いなのか、説明しましょう。

チャージだけでは経費にならない理由

チャージという行為自体は、ただ単にお金を交通費ICカードの中に移動させただけ。その段階では「仕事で必要な交通費として使った」わけではありません。

そんな堅苦しいこと言わないでよ。ほぼほぼ「チャージした金額 = 旅費交通費」でしょ?

社長

そうおっしゃるその気持ちもわかりますが、会社も個人も、税務調査の際に費用として認められるためには、「経費性があるか(私的費用でないか)」の立証がポイントになります。

旅費交通費の場合、経費性を立証するには、出発地~到着地や行き先・目的(たとえば、クライアントの●●社に行ったとか、営業で▲▲町付近を回ったなど)といった情報を明らかにする必要があります。

税理士きむら

チャージという事実だけではこういった情報が欠けているので、税務調査で経費として認められない可能性がありますよ。
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「今まで税務調査で問題にならなかった」は当てにならない

でも、チャージ代を経費で落としていても、この前の税務調査でお咎めがなかったのですが…。

社長

なるほど。そういうこともあるでしょう。

それは、税務署が決してそのような処理を認めたわけではなく
短い調査期間の間に、論点にならなかったからです。

また、金額もたかがしれているから、調査官が大目に見てくれたのかもしれません。

ただし、交通系ICカードの利用範囲が拡大し、チャージで他の買い物もできることから、今後は、「チャージ、即、交通費処理」していると、税務調査でもめることも大いに予想されます。

これはこう考えるとわかりやすいと思います。

税理士きむら

たとえば、従業員がチャージ代だけで交通費の精算を認めてくれと言ったら、あなたは首を縦に振りますか?
そんなの、何に使ったかわからないから、承認できないよ!

社長

ですよね!だから税務調査でも、それと同じことがいえるのです。

というわけで、今までチャージ代を経費で落としていた事業主・経営者の皆さまも、今後は旅費交通費の明細をシッカリ記録し、実際にかかった交通費を経費にしましょう!

旅費交通費精算書の作成は省力化できる!

▼というわけで、このような旅費交通費精算書(明細書)を作っておけば、まず、税務調査は問題ナシ。

旅費交通費精算書を作ることは、Excelでフォーマットを作ったり、「毎週金曜日に精算書を書く」などルーティン化すれば、決して大変な仕事ではありません。

精算書、どうしても書くのイヤっ、面倒!

社長

税理士きむら

そういう場合は、交通系ICカードの利用履歴を印刷し、行き先など補足事項をメモして集計し精算書代わりにするという手もアリですよ!

また、交通系ICカードのデータを読みとって精算書を作成するソフトも、いくつか出ています。外回りの営業担当者等が多い会社などは、こういったソフトの導入を検討するという手もあります。

そして、精算書のいいところは、会計処理がラクなこと。きちんと精算書をつけていれば、精算額1行で会計入力してもいいんですよ。

税理士きむら

会計ソフトの入力もラクになるので、旅費交通費精算書(明細書)の記入を激しくオススメします!

交通系ICカードその他の注意点

その他、注意点をいくつか。

買い物をした場合

交通系ICカードで事業の買い物をした場合には、店舗が発行した領収書やレシートを必ずもらうようにしてください。スイカやパスモの利用履歴だけではダメです。

なぜかというと、利用履歴だけでは店名や何を買ったかがわかりません。経費性という部分で否認される可能性があります。

消費税本則課税の事業者のリスク

消費税の課税事業者で本則方式で計算をしている場合、請求書等の保存がないと、仕入税額控除ができません。

交通系ICカードの利用履歴は「請求書等」ではないので、税務調査で利用履歴しかないことに目をつけられれば、消費税の納税額が、その分高くなってしまいます。

こういったリスクもあるので、旅費交通費精算書(明細書)の作成や、領収書の保存は、徹底したいですね!

デポジット(預け金)の処理

交通系ICカードの購入時に、500円のデポジット(預け金)を支払いますが、デポジットはカードを返却するときに全額が返金されるので、交通費として費用処理できないので注意しましょう。

預け金などの科目で資産計上することになります。

まとめ、つぶやき、あるいは編集後記

税理士きむら

「チャージしただけでは経費にならない」ということは案外知られていないので、この記事を書いてみました。これから確定申告の時期、個人事業主の方もどうぞお気をつけください!