こちらの記事は、「遺言を書こうとしている方」「費用をおさえるために自筆証書遺言にしようとしている方」「公正証書遺言との違いを知りたい方」向けです。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ( YouTube)です。
「遺言書、とりあえず自分で書いておこうかな」と思っていませんか? お気持ちはとてもよくわかります。でも、少しだけ待ってください。遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があり、どちらを選ぶかで、残されたご家族の負担が大きく変わります。
この記事では、自筆証書遺言が招きやすいトラブルと、なぜ私が公正証書遺言をおすすめするのか、費用対効果も含めてわかりやすく解説します。
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目次・読みたい個所へ
遺言は何のために書くのか? まず目的を整理しよう
そもそも、遺言書はなぜ書くのでしょうか。 遺言書の最大の目的は「相続人同士のもめごとを防ぐこと」です。
自分が亡くなった後、残された家族が財産の分け方で揉めないよう、生前に意思を明確にしておく—これが遺言の本質です。
もちろん、「この財産をこの人に渡したい」という自分の意思を実現することも大切な目的です。 ところが、せっかく遺言書を書いても、書き方によっては「もめることをむしろ増やしてしまう」ケースがあります。それが、自筆証書遺言にありがちなリスクです。
自筆証書遺言が招くトラブルとは?
自筆証書遺言とは、遺言者本人がすべて手書きで作成する遺言書のことです。費用がかからず手軽に作れる点が魅力ですが、その分だけリスクも抱えています。
① 形式の要件を満たさないと「無効」になる
自筆証書遺言には厳格な形式要件があります。財産目録以外は全文を自書(自分の手で書く)しなければならず、日付・署名・押印も必須です。パソコンで打った文章や代筆は認められません。 ほんの些細なミス——たとえば日付を「令和8年吉日」と書いただけで無効になります。「吉日」は具体的な日付ではないためです。
② 家庭裁判所での「検認」手続きが必要
自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所に提出して「検認」という手続きを受けなければなりません。検認が完了するまで、原則として遺言書を開封・使用することができません。 この手続きには数週間〜数ヶ月かかることもあり、その間は相続手続きが止まってしまいます。なお、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用した場合は検認が不要になります。
③ 発見されない・隠されるリスクがある
自宅で保管している場合、そもそも家族が遺言書の存在に気づかないケースがあります。また、内容によっては相続人の一人が隠してしまう危険性もゼロではありません。
④ 内容が不明確だと解釈でもめる
「預金を長男に」と書いたつもりでも、複数の口座があれば「どの預金のことか」で意見が分かれることがあります。不明確な表現や漏れがあると、結局は遺産分割協議が必要になり、遺言書を書いた意味がなくなってしまいます。
■ スポンサー広告 ■自筆証書遺言ありがちなリスクまとめ
改めて整理すると、自筆証書遺言には次のようなリスクがあります。
- 形式の不備による遺言書の無効
- 家庭裁判所での検認手続きの手間と時間(法務局保管制度利用時は除く)
- 紛失・未発見・隠蔽のリスク
- 内容が不明確で遺産分割協議が必要になるケース
「節約のために自筆証書遺言にしよう」とお考えの方も多いのですが、トラブルが起きたときの弁護士費用や時間・精神的コストを考えると、必ずしも「節約」にはならないことを知っておいてほしいのです。
書くなら公正証書遺言にしよう
では、どうすればよいのでしょうか。私のおすすめは、迷わず「公正証書遺言」を選ぶことです。 公正証書遺言とは、公証役場で公証人(法律の専門家)が作成に関与する遺言書のことで、遺言者が伝えた内容をもとに、公証人が法的に有効な形で文書を整えてくれます。
公正証書遺言の主なメリットは次のとおりです。
① 形式的な無効リスクがない
公証人が法律に沿って作成するため、形式上の不備で無効になる心配がありません。書き方のミスによるトラブルをそもそも防げます。
② 検認手続きが不要
公正証書遺言は、遺言者が亡くなった後すぐに使用できます。家庭裁判所での検認は不要なので、相続手続きがスムーズに進みます。
③ 原本が公証役場に保管される
作成した遺言書の原本は公証役場が保管します。紛失・隠蔽・改ざんのリスクがなく、いつでも謄本を取得できます。
④ 内容の明確さを担保できる
公証人がプロとしてチェックしながら作成するため、あいまいな表現や財産の特定漏れが起きにくいという安心感があります。
公正証書遺言の費用感
公正証書遺言には費用がかかります。主な費用は次のとおりです。
- 公証人手数料:財産の金額によって異なる(目安:数万円〜十数万円程度)
- 証人2名の費用:知人等に依頼すれば無料、専門家に依頼すれば1名あたり数千円〜1万円程度
- その他:謄本の取得費用など(数千円程度)
公証人手数料は、相続財産の総額と受遺者(財産をもらう人)ごとの財産額に応じて法律で定められており、おおむね数万円〜15万円前後が多い印象です。
財産を複数の相続人に分けるほど手数料は上がります。 「結構かかるな…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。でも、次のセクションをぜひ読んでみてください。
公正証書遺言の費用対効果(コスパ)を考えてみよう
私は、公正証書遺言ほどコストパフォーマンスの高い相続対策はないと考えています。
仮に相続でもめてしまった場合、弁護士に依頼すると着手金だけで数十万円、解決まで年単位の時間がかかることもあります。それに加えて、家族関係の修復不可能なダメージ……。
こうした「もめたときのコスト」と比較したとき、公正証書遺言の費用(数万円〜十数万円)は圧倒的に割安です。
「保険」として考えれば、非常に費用対効果の高い選択肢です。 また、公正証書遺言があることで残されたご家族が相続手続きをスムーズに進めやすくなるという時間的・精神的なメリットも見逃せません。
みんな公正証書遺言にした方がいいの?
「では全員が公正証書遺言を書くべき?」というご質問もよくいただきます。
でも、答えは「必ずしもそうではない」です。
たとえば次のようなケースでは、遺言書がなくても円滑に進む場合があります。
- 相続人が配偶者のみ、または子ども1人だけで相続人が実質1人のケース
- 財産が少なく、分け方についてすでに家族で合意ができているケース
一方で、次のようなケースでは公正証書遺言の作成を強くおすすめします。
- 相続人が複数いる(特に仲が微妙な兄弟姉妹がいる)場合
- 特定の人に多く渡したい、または渡したくないという希望がある場合
- 内縁の配偶者や孫など、法定相続人以外に財産を渡したい場合
- 事業を継ぐ子どもに特定の財産を引き継がせたい場合
- 再婚していて前の婚姻による子どもがいる場合
「うちは大丈夫」と思っていても、相続は実際に発生してみないとわからないことだらけです。少しでも不安があれば、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
遺言書に関するよくある質問
Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらが法的効力は強いですか?
法的効力の強さに差はありません。どちらも法律上有効な遺言書です。
ただし、自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクがあるのに対し、公正証書遺言は公証人が関与するためそのリスクがほぼありません。
Q. 公正証書遺言を作成するにはどこに行けばいいですか?
最寄りの公証役場に相談してください。公証役場は全国各地にあり、事前に予約をすれば相談から作成まで対応してもらえます。証人2名が必要ですが、公証役場に紹介してもらうことも可能です。
Q. すでに自筆証書遺言を書いているのですが、公正証書遺言に変えられますか?
できます。遺言書は何度でも書き直しができ、最新の遺言書が有効になります。すでに自筆証書遺言を書いている方も、公正証書遺言を新たに作成すれば、内容が矛盾する部分については新しいものが優先されます(内容によって取り扱いが異なる場合があるため、専門家にご確認ください)。
Q. 遺言書があれば必ず希望通りに財産を渡せますか?
必ずしもそうではありません。相続人には「遺留分」という最低限の相続の権利が法律で保障されています。たとえば「全財産を特定の一人に」という遺言があっても、他の相続人から遺留分の請求をされる可能性があります。遺言書の作成と合わせて、遺留分についても専門家に確認しておくと安心です。
まとめ:遺言を書くなら公正証書遺言を選ぼう
今回お伝えしたポイントを整理します。
- 遺言書の目的は「相続人のもめごとを防ぐこと」
- 自筆証書遺言は形式ミスで無効になるリスクがあり、検認手続きや保管の問題もある
- 公正証書遺言は費用がかかるが、形式的な問題がなく、検認不要、保管も安心
- 公正証書遺言の費用(数万円〜十数万円)は、もめたときのコストと比較すれば非常に割安
- 全員に遺言が必要なわけではないが、相続人が複数いる場合や特別な希望がある場合は強くおすすめ
「費用をおさえるために自筆証書遺言にしよう」という発想は、気持ちとしては理解できます。
でも、残されたご家族のことを思うなら、公正証書遺言という選択肢をぜひ検討してほしいというのが、相続専門税理士としての私の本音です。 遺言書の作成や相続対策についてご不安な点があれば、ぜひお気軽にご相談ください!



