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バイトの卒業記念に高級腕時計を贈る定食屋はどんな税務処理をしているのか

この記事は、従業員に高価な品を贈答しようとしている経営者の方向けです(なんとニッチな)

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。

私の地元に、4年間勤め上げた学生アルバイトに、卒業時に高級腕時計を贈ることで有名な定食屋さんがあります。

税理士きむら

この定食屋さんが腕時計の贈答についてどういう税務処理をしているのか、考えてみました。私なりの結論も出してみました!

大学生アルバイトに高級腕時計を送る「きさらぎ亭」

桜新町に「きさらぎ亭」という老舗の定食屋さんがあります。

こちら、入居していたビルの老朽化に伴い、退去を余儀なくされてしまいましたが、クラウドファンディングを行い、このたびめでたく新店舗での営業を再開しました。

私も早速行ってきましたが、以前と変わらない味で、嬉しかったです。

ところで、この「きさらぎ亭」は、美味しい・老舗という以外に、あることで有名でした。それは…

きさらぎ亭で4年間バイトを務め上げた大学生には、卒業時に高級腕時計をプレゼントしているんだそうです。

税理士きむら

このエピソードを聞いた時から、税理士としては、とても気になっていたんですよね〜。

というのも、この高級腕時計をきさらぎ亭がどう税務処理をしているかが、気になるんです。ちょっとした記念品のプレゼントであれば、気にする必要はないのですが。

そこで、色々な税務処理のパターンを考えてみたので、ちょっと上げてみます。

税理士きむら

同じような福利厚生を考えている経営者の方の参考になれば幸いです。

1)現物給与として処理

まず考えたのが、高級腕時計を現物給与として処理する方法。これが最もガチで、税務上もコンサバティブな処理でしょう。

現物給与とは、普通はお金で支給されるの給与を現物で支給することで、4つのケースに大別されます。

  1. 物品をあげたり、安く譲渡する場合
  2. 土地や家を無料で貸したり、安く貸す場合
  3. 福利厚生用施設の利用など、2以外のものを無料または安く提供する場合
  4. 個人的債務を免除または負担する場合

基本的には、現物給与にも所得税がかかるので、その現物を現金価値に換算して給与収入金額として、源泉徴収する必要があります。

この処理をすると、きさらぎ亭は給与として経費処理できますが、アルバイトは給与所得として課税されてしまうことになります。

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2)福利厚生費として処理

そこで経営者や税理士としては

税理士きむら

なんとかアルバイトさんたちに課税されない方法はないかなぁ。

と、考えるのが人情というわけです。

ぱっと思いつくのは、福利厚生費処理です。現物給与の中には所得税を課税しなくてよいものもあります。有名なのは一定の社員旅行や借り上げ社宅、通勤手当などですが、高級腕時計に類似するものとして、「創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」に、一定の場合には給与課税されないという通達があります。

これに該当すれば、きさらぎ亭は福利厚生費として経費処理ができ、アルバイトさんは非課税になります。

要件を見てみましょう。

1 創業記念などの記念品
(1) 支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること。
(2) 記念品の処分見込価額による評価額が1万円(税抜き)以下であること。
(3) 創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給をするものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること。

2 永年勤続者に支給する記念品や旅行や観劇への招待費用
(1) その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
(2) 勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。
(3) 同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること。

うーむ。4年務め上げたアルバイトに対するものであることなどから考えて、高級時計を非課税処理するのは難しそうです。

「社会一般的にみて記念品としてふさわしい」「社会一般的にみて相当」に該当しませんかねぇ。

店主

税理士きむら

難しいでしょうねぇ。「社会一般的でない」から、きさらぎ亭の高級腕時計授与が話題になるわけですし…。

3)交際費として処理

金額にもよりますが、数万円〜10万円くらいの腕時計であれば、「お世話になった人へのお礼」として、贈答品処理ができるかも?と考えました。

その場合、きさらぎ亭は交際費として経費処理ができ、アルバイトは一時所得になります。

税理士きむら

一時所得であれば、特別控除額(最高年間50万円)の範囲内であれば、アルバイトに追加の課税は発生しません。

ただ、腕時計の授与が、アルバイトの地位に基づいて支給されたものであるから、税務調査で「給与課税しなさい」と揉める可能性は大アリですね。

4)退職金として処理(きむらならこうします)

そこで考えたのが退職金としての処理です。

退職給与規定を作り、4年間務め上げたアルバイトには、退職金として高級腕時計を支給する旨を記載します。

「退職給与の受給に関する申告書」等の税務書類をきちんと作っておくようにします。

そうすれば、きさらぎ亭も退職金として経費処理することができますし、4年間勤め上げれば退職所得控除は160万円なので、よっぽどの高級時計でない限り、アルバイトには課税されません。

注意
これはきむらが、きさらぎ亭のチキンカツを頬張りながら考えたことであって、実際にきさらぎ亭がどういう税務処理をしているかは、私にはわかりません

まとめ

税理士きむら

きさらぎ亭でバイトをした大学生は、この腕時計をはめて、この春、新たな世界に旅立つのですね。とてもイキな心遣いです。

そんな経営者の心遣いが後でアダ(税務調査が入り追徴課税されてしまう等)にならないよう、税務処理はきちんとしておきたいですね!

この春、卒業する学生バイトに高級品で報いようとしている経営者のみなさんのご参考になれば幸いです。