こちらの記事は、契約書に押印をする経営者やフリーランスの方向けです。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
ビジネスで大切な局面である契約の締結。いざ押印となると、ちょっと緊張しますよね。
その際に「捨印を」などと指定され、「まあ、言われたとおりに押せばいいか」と、意味も深く考えず押したことはありませんか?
税理士きむら
なぜ契約書に署名捺印をするのか
契印・消印・捨印について話をする前に、まず、契約書の「署名捺印」のお話しをしましょう。
何が違うんだろう?
順を追って説明いたしますね。
契約の当事者本人が、契約に同意したことを明確に意思表示するために、署名をします。
ほんとうは、当事者が署名する(自筆で氏名を手書きする)だけでも契約書の証拠能力はちゃんとあるんです。
ところが、日本はハンコ社会。署名だけではこころもとない感じを受けるので、意思表示の証拠能力をさらに強固なものにするために、押印(捺印)をすることが求められます。
一方で、契約書に署名ではなく、記名(他人による代筆、ゴム印やワープロ印刷で氏名を記すこと。つまり、署名以外の方法で氏名を記載すること)した場合は、契約書の証拠能力は非常に乏しいことになります。
でも、契約書を多数作成する大きな会社では、代表取締役が全部「署名」をすることは、到底不可能ですよね。
そこで、記名をした場合は、押印(捺印)と合わせることで、商法の規定上「署名に代えることができる」とされています。
なお、重要な契約の場合には実印で捺印をし、それが実印であることの証明として、印鑑登録証明書を添付します。
税理士きむら
1. 署名+実印で捺印
2. 署名+捺印
3. 署名のみ
4. 記名押印
となります(重要な契約書の場合、『記名のみ』はまずありえません)。
・署名…自筆で氏名を手書きすること
・記名…他人による代筆、ゴム印やワープロ印刷で氏名を記すこと。つまり、署名以外の方法で氏名を記載すること。
・押印、捺印…ほぼ同義語です。「記名」の時には「押印」が(記名押印)、「署名」の時には「捺印」(署名捺印)が使われるのが一般的。
・実印…実印とは、市区町村に届け出て登録をした印鑑のことです。市区町村の役所に実印を登録することを印鑑登録といい、印鑑登録をすると印鑑登録証明書を取ることができます。
契約書の「契印」
契約書の「署名捺印」「記名押印」について理解したところで、ここからが、今回の本題です。
契約書の「契印」の押し方から、お話しします。
「契印」の押し方の理解のためには、契印の意義から考えるといいですよ。
- その契約書が一連一体の契約書であることを証明するもの
- 差し替えや抜き取りを防ぐためのもの
そして、契印は、署名捺印(もしくは記名押印)に使用した印鑑と同じ印鑑で、かつ、原則として契約当事者全員が押印します。
それでは、契約書の形態別に、どのように「契印」を押していけば良いのか、見ていきましょう。
契約書が紙1枚の契印
契印は、契約書の連続性や、差し替え・抜き取りを防止するためのものです。
▼したがって、このように紙1枚の契約書の場合には、契印を押す必要はなく、署名捺印(記名押印)するだけで良いことになります。
ホチキスどめの契約書の契印
契約書というと、なんとなく、製本テープでバッチリ製本しなくちゃいけないイメージがありますが、そんなことはありません。ホチキスどめでOKです。
言うまでもないですが、ホチキスどめであろうと、効力にまったく関係はありません。
▼ただし、ホチキスどめした契約書の場合、契印は左右両ページにまたがるように、かつ、全ページに契印しなくてはなりません。
契印の
- その契約書が一連一体の契約書であることを証明するもの
- 差し替えや抜き取りを防ぐためのもの
という趣旨を考えれば、このように押さねばならない理由は、ご理解いただけるかと。
製本した契約書の契印
契約書のページ数が多い場合は、製本テープで製本することが多いかと思います。
見栄えもそうですが、製本したほうがページの欠落などの劣化もおきにくいので、重要な契約書ほど、製本をすることをおすすめします。
▼製本された契約書の場合は、裏表紙に、製本テープをまたぐようにして契印を押します。
つまり、契約書を製本した場合は、ホチキスどめのように、全ページにぺたぺた契印を押さなくても大丈夫です。
■ スポンサー広告 ■契約書の「割印」
次は、「割印」についてお話しします。
▼割印とは、このように、少しずらした形で契約書を重ね合わせ、合せた境目に押印するものです。
「割印」も、まずはその意義を理解しましょう。
同じ内容の契約書を複数作成した場合に
- これ以外の契約書が存在しないことを証明するもの
- 複製防止の役割をするもの
したがって、複数ページにわたる契約書の場合でも、1ページ目だけに割印を押せば、ことは足ります。
また、割印は必ずしも契約書の印鑑と同じでなくても大丈夫です。
安易に押してはならない「捨印」
最後に「捨印」についても触れたいと思います。
▼「捨印」とは、契約書などの文書に、前もって署名捺印(記名押印)に使用した印鑑を欄外に押しておくことです。
▼契約締結後、契約書の内容を修正する必要が出た場合に、捨印の横に文書内の訂正内容を記述することで、訂正印の代わりの役目を果たします。
つまり、捨印は後日修正が出た場合に、いちいち相手に訂正印をもらわずに済むというメリットがあります。
逆に、捨印を押して契約書を渡すということは、相手に勝手に内容を書き換えられるかもしれないという、リスクがあるということです。
ただし、いちおう捨印による訂正はあきらかな誤記の部分に限られ、契約内容の重要な部分の捨印による訂正は、認められないとされています。
それでも、フリーランスや経営者の方は、捨印の意味を理解した上で、押す際には慎重に対応するようにしましょう。
税理士きむら
・重要な契約書には捨印はせず、訂正個所が見つかったら、面倒でも訂正印で対応する
・やむを得ず捨印をする場合には、契約書のコピーをとっておく
ことをおすすめします!
まとめ
以上、署名捺印(記名押印)・契印・割印・捨印についての基礎知識でした!
税理士きむら
特に、捨印については、押してしまったら相手に修正を委ねることになります。それを理解した上で、契約内容の重要性も考慮に入れた上で、押す・押さないを判断するようにしましょう。