こちらは、年末調整や確定申告で「自分や配偶者、扶養家族の合計所得金額を計算したい!」という方向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
この記事はこちらの記事の続編です。
合計所得金額の計算のしかたを徹底解説1〜扶養や配偶者の控除判定に必須!まだ読んでないという方は、この「合計所得金額の計算のしかたを徹底解説1」をお読みいただくことをおすすめします。
税理士きむら
後編では、退職金をもらったり、不動産を売却したり、株式の売買をした時のような、ちょっと難しいケースについて解説します。
退職金をもらった場合〜退職所得をプラスして判定
「合計所得金額の計算のしかたを徹底解説1」でお話ししたとおり、「合計所得金額」は、確定申告書Bの⑨(確定申告書Aだと⑤)の額です。
ところが、この⑨の金額にプラスして「合計所得金額」を考えなくてはならないケースがあります。
それは、退職所得と山林所得があった場合です。
とはいえ、山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得ですから、超レアケースだと思います(私も実務でまだ経験したことがありません)。
そこで、ここは退職所得に絞ってお話しします。
退職所得とは、勤務先から受け取る退職手当などのこと。退職所得は、次のように計算されます。
退職所得
(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額※)×1/2※※=所得額
※退職所得控除額
・勤続年数20年以下の場合は40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
・勤続年数20年超の場合は800万円+70万円×(勤続年数-20年)
※※役員としての勤続年数が5年以下の場合の役員退職金については、×1/2の計算の適用はありません。
退職所得は「分離課税」で、総合課税の給与や年金とは別の「分離課税用・第3表」という用紙で所得や税額を計算します。
つまり、確定申告書Bの⑨(申告書Aの⑤)のところに、退職所得は含まれていません。
そこで、退職金収入がある場合には、「合計所得金額の計算のしかたを徹底解説1」でお話しした金額に退職所得の額をプラスして「合計所得金額」を計算します。
不動産を売却した場合〜譲渡所得をプラスして判定(ただし特別控除前の金額で)
不動産を売却した年は、その売却から生じた譲渡所得をプラスして「合計所得金額」を計算します。
ただし、譲渡所得の計算の際に、所得を減額する「特別控除」を使ったときは、特別控除額を控除する前の金額で「合計所得金額」を計算します。
たとえば、あなたがマイホームを売って、譲渡所得が2,000万円だったとします。
「居住用の3,000万円特別控除」を使うことでこの譲渡益には課税はされませんが、「合計所得金額」の計算の際には、特別控除をする前の譲渡所得2,000万円を用いて計算するということです。
株式投資で収益がある場合〜一筋縄ではいきません
株式投資をしている方は、「合計所得金額」の判定をする際に間違いをしやすいのでご注意を。
まず、
・配当所得のうち源泉分離課税されるもの
・源泉徴収選択口座を通じて行った上場株式等の譲渡による所得等で確定申告をしないことを選択したもの
は「合計所得金額」の計算の際に、それらの所得額を加える必要はありません。
つまり、上場株式の売買や配当でいくら儲けていたとしても、配当を申告不要の源泉分離課税としていたり、株式の譲渡について源泉徴収口座で申告不要にしておけば、「合計所得金額」を低くおさえられるということ。
「合計所得金額」を低くおさえることで、扶養控除や配偶者控除等を受けることができるかもしれません。
これは知っておきたい、暮らしの税金の知恵の1つです。
一方で、
・配当について総合課税で申告することを選択
・株式の譲渡について他の口座での譲渡損益と相殺する目的で確定申告をした場合
は「合計所得金額」の計算の際に、それらの所得額を加える必要があります。
この場合、申告した株式の譲渡所得等について、前年以前の損失を繰越控除している場合は、控除前の所得を使って「合計所得金額」を計算します。
非課税収入を「合計所得金額」に加えないように
所得税法で「非課税」とされている収入を、「合計所得金額」に含めて計算しないようにしましょう。
よくある収入の例でいうと、失業保険や遺族年金です。
「合計所得金額」総まとめ
税理士きむら
・分離課税の所得がない人は、まずは確定申告書B⑨(確定申告書A⑤)の額イコール「合計所得金額」と考えてよい
・退職金や分離課税の譲渡所得がある場合は、次の金額が「合計所得金額」
確定申告書B⑨(確定申告書A⑤)+退職所得+譲渡所得(特別控除前、損失の繰越控除前)
・源泉分離課税とした配当や、源泉徴収口座で申告不要とした株式の譲渡は「合計所得金額」に含めない
・「合計所得金額」には、所得税法で非課税とされるものを含めない。