こちらは、年末調整や確定申告の際に、自分の親族が「生計を一にする」に当てはまるかどうかの判断に悩んでいる方向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
よく目にする税法用語に「生計(せいけい)を一(いつ)にする」(同一生計)があります。
税理士きむら
その判断の基準について、お話しします。よろしければ、最後までお付き合いください。
「生計を一にする」は重要な税法用語
確定申告をしていて、はたまた年末調整の用紙を書いていて、「生計を一にする」という表現は、しばしば耳にする言葉です。
それだけでなく、税の実務に携わっていても、「生計を一にする」はしばしば出くわすワードです。というのも、所得税法、法人税法、相続税法など、多数の税法の主要な法令の中にたびたび登場する言葉だからです。
特に所得税では、私たちの生活に深くかかわる規定で「生計を一にする」という用語が出てきます。
例えば、配偶者控除、配偶者特別控除や扶養控除の規定にも「納税者と生計を一にしていること」という要件があります。
「生計を一にする」の判断が難しい理由
とこがろこの言葉、これだけ身近で重要な税法用語にも関わらず、具体的な定義を定めた規定はありません。ですから、判断が難しいんです。
まず、基本的には、同じ屋根の下に暮らし、同じ釜の飯を食べていれば、「同一生計」と言えます。
ところがその他のケースについては、わずかに所得税基本通達などに、単身赴任者や、生活費・学費の仕送りを受けている者は同一の家屋に起居していなくも「生計を一にする」として取扱うなどと、例示がされているので、それを頼りに実務では「生計を一にする」に当てはまるかどうかの判断をしています。
仕送りを受けている場合や単身赴任は「生計を一にする」に該当
この場合は生活費・学費の仕送りを受けている者に該当するので、そのお子さんは「生計を一にする親族(子)」ということになり、アルバイト収入を年間103万円以内に留めているならば、扶養控除の対象にすることができます。
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では、同一の家屋に起居している場合は、無条件に「生計を一にする」に該当するのでしょうか?
それについては判例も出ていて、日常生活の糧を共通にしていること、すなわち、消費段階で同一の財布のもとで生活していることがポイント。
明らかに互いに独立した生活を営んでいない限りは、大概、「生計一」と判断しても良さそうです。
「家庭内別居」の場合はどうなる?
確かに、朝起きてから寝るまで顔も合わせないし会話もしない。寝るのも別々なんて夫婦も、最近はいらっしゃるみたいですね。
「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」かどうかは、不動産登記の状況(区分所有の場合、独立性が高いかどうか)、家賃等の支払いの有無、生活費の負担の状況、電気・ガス等のメーター設置状況、電話の使用状況など、経済的側面と物理的側面の双方から総合的な見地で判断することになります。
「家庭内別居」でも、たいていの場合は、同一の家屋で起居している親族が「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」という状況証拠が出てこない限りは、「同じお財布で生活している」ものとされます。
「生計一」で納税者に不利になることも
「生計を一にしている」と判断された場合、納税者にとって有利になることばかりではなく、不利になることもあります。
例えば、個人事業主が親族に給与や報酬などを支払い、それを経費にする場合には、同一生計でないことが原則です(同一生計の親族に払う場合には、青色事業専従者給与等にしなくてはなりません)。
まとめ
配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除等の判断の時に、重要な要件である「生計を一にする」。
これは、同居しているかどうかでは必ずしも要件ではなく、単身赴任や修学、療養等の都合で別居している場合でも、生活費、学費、療養費等の送金が行われていれば、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
「家庭内別居」でも、「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」という状況証拠が出てこない限りは、「同じお財布で生活している」ものとされるので、たいていの場合は「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
税理士きむら
「生計を一にする」について、迷われる事例が出てきた場合には、希望的観測で判断をせずに、税理士に相談をしたり、税務署に照い合わせをすることをお勧めします。