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税法用語の意味がわかるブログ(12)「普通のことばの使い分け」

こちらは、税法用語に詳しくなりたい、経営者や経理担当者向けの記事です。

時間・行動・お金をコントロールする術を、ブログでお伝えしています。税理士のきむら あきらこ(@kimutax)です。

不定期連載「税法用語の意味がわかるブログ」第12回目です。

きむら

私が税務会計業界に入った当初の記憶を思い起こしながら、「え!こんな意味なんだ」と違和感を感じた税法用語の中から、これを覚えておくと税法の知識が深まるというものをピックアップして、解説しています。

言葉の使い分けには、1つ1つ意味がある

今回の税法用語は、いつもとちょっと趣きが変わります。

税法用語に慣れ親しみ、実務に精通してくると、税法の専門書や条文を読む機会が増えます。そんな時、ぜひ注意して読んで頂きたいのが、なんてことはない「普通のことば」の使い方です。

例えば、皆さんは日常会話や普段の文章では「とき」「時」「場合」を、あまり意識して使い分けることはないと思います。そこで、次の税法の条文をちょっと見てみてください。

税務署長は、還付金の還付をする場合において、納付された延滞税があるときは、その額のうち政令で定めるところにより計算した金額を併せて還付する。(消費税法)

 

法人の代表者が2人以上ある場合、これらの者のうち社長、理事長、専務取締役、常務取締役その他の者でその法人税申告書等の作成のにおいてその法人の業務を主宰しているもの。(法人税法)

この使い分けには実は、ちゃんとした意味があります。そこで、税法用語によく出てくるごく普通の言葉の使い分け方についてお話しいたします。

「場合」・「とき」・「時」

「場合」は、要件、前提等を表すときに用います。

「とき」も、要件、前提等を表すときに用いますが、「場合」との違いは、「○○の場合において××のとき」のように、要件等が2つ以上ある場合に使うことが多いです。

一方「時」は、時点を表します。

このように、税法では「とき」と「時」は、明確に使い分けています。

「者」・「物」・「もの」

自然人(人間)や法人には「者」を使い、動産や不動産等の有体物をあらわす場合には「物」を使い、人格をもたない行為主体・無体物・人格や物をあらわす以外の場合に「もの」を用います。

これらは通常はすべて「もの」と読みますが、音読する際には、あえて聞き手に伝わるように、それぞれ「しゃ」・「ぶつ」・「もの」と区別して読むことがあります。

「科料」・「過料」

「科料」は刑法で定められている財産刑で、罰金より軽い刑罰です。

「過料」は刑罰ではなく、行政上の義務を履行させる心理的強制として科せられるもので行政罰・秩序罰とも呼ばれます。

これも本来の読み方は同じ「かりょう」ですので、実務で音読する際は、区別できるよう「とが料(科料)」、「あやまち科(過料)」などと読むことがあります。

「以下」・「未満」、「以上」・「超える」、「以前」・「前」、「以後」・「後」

「以下」・「未満」

「以下」はその数字を含む下の数字の範囲のことで、「未満」はその数字を含まない下の数字の範囲のことです。

「以上」・「超える」

「以上」はその数字を含む上の数字の範囲のことで、「超える」はその数字を含まない上の数字の範囲のことです。

「以前」・「前」

「以前」はその日付を含む期間のことで、「前」はその日付を含まない期間のことです。

「以後」・「後」

「以後」はその日付を含む後ろの期間のことで、「後」はその日付を含まない後ろの期間のことです。

これらは、子どもの頃に学校で習ったことの復習ですが、数字にたずさわる者としてとても大切なことなので、あえて上げてみました。

「及び」・「並びに」

条文等を読んでいるとやたら目につくのが「及び」・「並びに」です。

どちらも「○○と××」というような対等の関係を示す接続詞ですが、使い分けとしては、結びつきの強さで分けます。

「及び」は併合の意味で使い、並列する語句が2つのときには、その接続に用います。

3つ以上のときには、始めの2つの用語の間を「、」で区切り、最後の語句を繋ぐのに「及び」を用います(例:○○、××、及び△△)。

一方、「並びに」は、併合の意味で「及び」を用いて並列した語句を、更に大きく結び付ける必要があるときに、その接続に用います(例:A及びB並びにC及びD)。

「又は」・「若しくは」

「又は」・「若しくは」は、税法の条文等で、とてもよく目にします。

意味は「○○か××」というように、どれか一つを選ぶときに用いる接続詞です。

使い分けとしては、「及び」「並びに」と同じく、結びつきの強さで分けます。

つまり、「又は」は、選択の意味で使い、並列する語句が二つのときには、その接続に使い、三つ以上のときには、始めの2つの用語の間を「、」で区切り、最後の語句を繋ぐのに「又は」を用います(例:○○、××、又は△△)。

「若しくは」は、選択の意味で「又は」を用いて並列した語句を、更に選択の意味で分ける場合に用います(例:A若しくはB又はC若しくはD)。

「看做す(みなす)」・「推定する」

一見同じ意味のようなこの2つの言葉ですが、「看做す」は、法令が「絶対的に○○である」と法律関係を確定することを意味します。

つまり、ここに書かれていることと異なる事実を主張することはできない場合に用います。

一方で「推定する」は、法令が「おそらく○○であろう」と一応の判断を下す場合に用いられ、立証すれば、空いてした法律関係を覆すことができます。

「直ちに」・「遅滞なく」・「速やかに」

これも税法の条文中によく登場する言葉ですね。

どれも時間的に「すぐ」という速さを意味しますが、「直ちに」という使い方が最も速く、何があってもすぐ即座にやらなければならないという場合に使われます。

「遅滞なく」は、他に何か正当な理由などがあるときは、多少の遅滞は認めるという程度の速さに場合に用い、「速やかに」は、できるだけ速くという努力を促す意味の場合に用います。

「科する」・「課する」

両方とも一定の義務で負担を負わせる場合に用いますが、「科する」は、罰金、過料など刑事罰や行政罰をかける場合に用います。

一方で、「課する」は、税金など義務の負担を命ずる場合に用います。

まとめ

きむら

このような言葉の使い分けを踏まえた上で、次回から税法等を読んでみましょう。
底辺にある意味を、誤解なく、かつ、より深く理解できるようになりますよ!

※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして掲載しています。