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税法用語の意味が分かるブログ(22)「帳簿書類の保存期間」

こちらは、税法用語に詳しくなりたい、経営者や経理担当者向けの記事です。

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。

不定期連載「税法用語の意味がわかるブログ」第22回目です。

経理業務に携わっていると、色々な書類の山に埋もれてしまいますよね。

そして
「これは保存すべきもの?保存しなくていいもの?」
と、悩んでしまいます。

税理士きむら

会社の今までのやり方に倣って、なんとなくわかっていたつもりになっていた帳簿書類の保存期間。この機会に、税法や会社法で規定されている保存しなければならない書類とその保存期間を、確認してみましょう。

帳簿書類の具体例と税法で規定する保存期間

帳簿書類とは、帳簿を備え付けてその取引を記録した「会計帳簿」と、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した「書類」とをあわせたもののことです。

この帳簿書類等の保存期間は、法人税法では7年となっています。

よく「決算書類の保存期間は7年」という話を耳にするかと思いますが、これは法人税法上の保存期間のことを指しています。

ただし、気をつけなくてはならないのが、赤字で繰越欠損金が出た年度の税法上の保存期間です。

税制改正により、青色申告の欠損金の繰越期間が9年・10年と、立て続けに改正されたことに伴い、欠損金の生じた事業年度の帳簿書類の保存期間は7年ではなく、次のように延長されています。

  • 平成20年4月1日以後に終了した事業年度に欠損金がある場合…保存期間 9年間
  • 平成30年4月1日以後に開始した事業年度に欠損金がある場合…保存期間 10年間

その他、所得税も含めて、税法で規定する「帳簿書類」とその保存期間について、まとめてみました。


※大法人 :資本金等の金額が1億円超の法人
中小法人 :資本金等の金額が1億円以下の法人
その他個人 :小規模個人以外
小規模個人 :前々年の事業所得及び不動産所得が300万円以下

おすすめは「保存期間10年」

こうなると黒字になったり赤字になったりを繰り返している会社は、保存期間の管理が悩ましいところです。

そこで、おすすめなのは、いっそのこと「保存期間10年」に統一してしまうこと。

(ちょっと、大雑把すぎますが。適当に大雑把であることも、時に事務方には大切なことです。)

というのも、重要な会計帳簿(表の薄墨部分)は、どうせ会社法の規定では10年間保存するのがきまりだから。

将来、外部株主を招き入れることになり、会社法をシビアに守るべき会社になるかもしれませんから、保管スペースに余裕があれば、10年に統一してしまうのは1つの手です。

注意
ただし、法定の保存期間より長く保管することが許されない書類があります。
マイナンバー(個人番号)が記載された書類(特定個人情報)は長く持つことが認められていませんので、扶養控除等申告書などにマイナンバーが記入されていたら、保管期限の7年が過ぎたら確実に廃棄するようにしましょう。
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たとえ保存期間が決められていても永年保存すべきもの

こういった法律の要請とは別に、決算書・申告書・定款・登記関連書類・免許許可関連書類・不動産関連書類・重要な契約書・申請願・届出書などは、永年保存するのが望ましいです。

特に定款や決算書など、会社の「歴史」を如実に語ってくれるようなものですから。

保存年数の数え方

ところで、保存年数の数え方は、どうなっているのでしょうか。

期首から数えるの?期末から数えるの?

答えは、税法の場合「確定申告書の提出期限から○年間」、会社法の場合「作成日や帳簿閉鎖日(決算の締切日)から10年」となっています。

10年保存の場合、「確定申告書の提出期限から10年間」が最も長い保存期間になるので、ここに合わせるといいでしょう。

(例)

決算期 確定申告書提出期限 保存期限(10年の場合)
2019年3月31日 2019年5月31日 2029年5月31日

書類の保存期間を守らないと…

では、この帳簿の保存期間を守らなかったら、どんなペナルティがあるんでしょうか。代表的なものをあげてみました。

消費税

消費税法上、「仕入税額控除」の適用を受ける要件として、「帳簿書類の保存」が義務付けられています。

つまり、帳簿を保存していないと、仕入税額控除が認められない可能性があります。

仕入税額控除が認められないということは、売上に係る消費税を、まるまる納めねばならないということ…。

青色申告申告の取消

青色申告は、「帳簿書類の保存」が要件となります。

つまり、帳簿を保存していないと、「青色申告」が取り消されても文句はいえません。

青色申告が取り消されると、「欠損金の繰越控除」など、各種税法上の特典が使えなくなってしまうこと。

うーん帳簿はしっかり保存しておきたいですね。

まとめ

税理士きむら

帳簿書類とは、帳簿を備え付けてその取引を記録した「会計帳簿」と、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した「書類」とをあわせたもののこと。
帳簿書類の保存期間は法人税法では7・9・10年、会社法では10年になっています。
中小企業は、保管期限の管理事務をする余裕もないと思いますので、保管スペースに余裕があるならば、いっそのこと10年に統一するのも手です。

※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして記載しています。

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