こちらは、税理士や会計事務所に勤務している方向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
不定期連載「税法用語の意味がわかるブログ」第28回目です。
税理士きむら
一般的な「価格」と「価額」の違い
まず、一般的なお話しから。
一般的には「価格」は、個別の金額や値段のことをさします。
青果店Aでリンゴが1個100円で売られていたら、その100円が「価格」です。青果店Bでリンゴが150円で売られていれば、150円が「価格」です。
その金額が安くても高くても、売主のつけた希望価格、又は、買主との間で合意された値段が「価格」です。英語で言えば「価格」はPriceと訳されます。
次に、「価額」は一般的には、そのものの価値に相当する金額をいいます。英語で言えば「価額」はValueと訳されます。
例えば、あなたが絵を100万円で画廊から買ったとしましょう。
100万円は絵の「価格」です。
ところが後年、その絵の画家が非常に有名になり、あなたの絵は300万円の価値があると鑑定されました。この場合の300万円は「価額」になります。
つまり、一般的には、「価格」は主観的な要素が強いのに対し、「価額」はより客観的な金額のことを言います。
税務や会計での「価格」と「価額」の使い分け
このように「価額」は客観的な意味合いがある金額のことなので、税務や会計の世界で「価額」と言うと、特定された物の具体的な金銭的価値のことを指します。
例えば、取得などして帳簿に記載された金額は、特定された物の具体的な価値なので、「取得価額」とか「帳簿価額」といった用語で表現されます。
対して、販売店や売り手が付けた取引金額のことを、税務や会計の世界では「価格」と表現することが多いです。
ちょっと例を出してみましょうか。
例えば、あなたの会社が機械を300万円で購入し、据付費等の付随費用10万円を合わせて支払った場合には
「価格300万円の機械装置を購入し、付随費用等を合わせて取得価額は310万円になった。減価償却を行い、期末の機械装置の帳簿価額は250万円。」
などと表現することになります。
■ スポンサー広告 ■「価格」と「価額」が出てくる条文
相続税法には
相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とする。
という条文があります。1つの条文の中に「価額」と「価格」が出て来る面白い例ですが、あいまいな表現を許さない法律ですから、当然この条文も、「価格」と「価額」を使い分けしています。
各々の財産は特定された個別のものですから、その金額については「価額」と表現し、相続税の計算をする上でベースとなる金額は、相続税法で定義されている一般的なものなので、その金額は、「課税価格」と表現されています。
まとめ
「価格」は主観的な要素が強いのに対し、「価額」はより客観的な金額のことを言います。会計や税法でも、その視点で使い分けをしています。
税理士きむら
※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして記載しています。