こちらは、税法用語に詳しくなりたい、経営者や経理担当者向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
不定期連載「税法用語の意味がわかるブログ」第23回目です。
会社経営や経理に携わっていると、色々な税務判断の必要に迫られ、税務署や税理士事務所に問合せることもあるかと思います。
税理士きむら
「社会通念上」イコール「常識的に考えて」
社会通念上という言葉は、税法ではたとえば次のような場面で出てきます。
例(1)福利厚生
従業員の慰安目的で企画する会食や宴会、従業員に支出するお祝い金や不祝儀金、長年継続して勤めた従業員に対する記念品の贈答など、こういった福利厚生費用について、どれくらいまでなら相手に給与課税されないか、税法上は明確な定義はなく、
「会社がその従業員の生活の向上と労働環境の改善のために支出する費用のうち、給与、交際費及び資産の取得価額以外のもので、従業員の福利厚生のため、すべての従業員に公平であり、社会通念上妥当な金額までの費用」
とされています。
例(2)弔慰金
従業員や役員が不幸にして亡くなった時など、会社が遺族に弔慰金を支払う場合があります。
この弔慰金は、社会通念上相当と認められるものに限り所得税および贈与税が課されないこととなっています。
こういった表現に出くわした時は、「社会通念上」を「常識的に考えて」と読み替えるといいでしょう。
常識的でない、度が過ぎる額や豪華すぎる内容のものには、その恩恵を受ける相手に対し、所得税や贈与税などの税金を課しますよ、ということです。
また、恩恵を与えたほうについても、寄付金扱いになるなどして、一部損金性を否認される可能性があります。
なぜ、あいまいな表現に?
ところでこの「社会通念上妥当・相当な場合に認められる」という表現は、あまりにも曖昧に思うかもしれませんね。
みなさんからしてみたら
「しっかり定義を決めてくれたほうが、判断がラクなのに…」
と感じるところでしょう。
しかし一方で「社会通念上」という表現は、税法の弾力性の側面でもあります。
物価などの社会情勢、個々の会社の事業や経済状況、相手との関係性によって、福利厚生等に充てる費用の額は変わるものです。また、地域によって差が生じる場合もあるでしょう。
これを一律に税法で「宴会費用は1人あたり10,000円以内であれば、福利厚生費とする。それを超える額には所得税を課する」などとするのは、あまりにも硬直的です。
そこで「社会通念上」という表現により、納税者個々の判断に委ねる余地を残しているんですね。
そういう意味では、税法、やるじゃん!
■ スポンサー広告 ■気をつけるべきポイント
みなさんが実務で税務取扱いを調べている際に「社会通念上」という表現に出会ったら、次の点に気をつけるようにしてください。
- 法令の中では「社会通念上」とされていても、実は通達で細かい金額の限度などが規定されている場合があります。通達も確認しましょう。
- 「社会通念上」とされていても、決して自分の思い込みだけで「これくらいの額ならいけるだろう」と判断しないようにしましょう。上司・税理士事務所などによくよく相談をするようにしましょう。
- お祝い金や不祝儀など、統計集等で世間相場を調べるのも、「社会通念上」妥当な額を確認するのに有効な手です。
まとめ
税理士きむら
「社会通念上妥当な額」なら大丈夫、なんて言われても、あまりにも曖昧に感じるかもしれませんね。
でも「社会通念上」と表現することにより、物価などの社会情勢、個々の会社の事業や経済状況、相手との関係性によって、納税者個々の判断に委ねる余地を残しているんです。そういう意味では、「社会通念上」という表現は、税法の弾力性の側面でもあります。
※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして記載しています。
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