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未婚のひとり親も住民税非課税の対象に(2021年度分から)「未婚のひとり親と税制」まとめ

こちらは、未婚のひとり親の方や、寡婦控除・寡夫控除の改正に関心がある方向けの記事です。

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。

未婚のひとり親の方は、所得税や住民税の計算にあたり、寡婦控除(夫)控除を利用することができません。

平成31年度の税制改正で
「未婚のひとり親も控除できるようになるのでは」
と期待されましたが、実現しませんでした。

しかしながら、個人住民税の非課税の対象とされることになりました。

きむら

住民税の非課税って?どんな内容で、いつから?
未婚のひとり親の方は、気になるところですよね。早速、解説いたします。

現在(2019年・令和元年時点)の寡婦控除・寡夫控除

婚姻歴のある独身の方で、一定の要件を満たす人は、年末調整や確定申告で申請することにより、寡婦(夫)控除を利用することができます。

寡婦(夫)控除を受けることができれば、所得税や住民税が軽減されます。

寡婦控除・寡夫控除についは、こちらの記事に書いてあります。詳しく知りたい方はご覧ください(^ ^)

寡婦控除控と寡夫控除「寡婦控除・寡夫控除」しっかり理解し控除を受けよう!(判定フローチャート付き)

ここでも、簡単に解説をいたしますね。

寡婦控除

次の1)か2)のいずれかに該当する場合には、寡婦控除を受けることができます。

1)夫と死別又は離婚した後婚姻していない人(もしくは夫の生死が明らかでない人)で、扶養親族又は生計を一にする子のある人

2)夫と死別した後婚姻していない人(もしくは夫の生死が明らかでない人)で、合計所得金額が500万円以下の人

このうち

  • 扶養親族である子を有し、合計所得金額が500万円以下

という要件に該当する場合には、控除額がさらに厚くなります(特別の寡婦)

寡夫控除

生計を一にする子があり、かつ、合計所得金額が500万円以下で、妻と死別又は離婚した後婚姻していない人(もしくは妻の生死の明らかでない人)は、寡夫控除を受けることができます。

寡夫控除には、「特別の寡婦」のような控除額が厚くなる仕組みはありません。

所得から控除される額(控除額)

所得税 住民税
寡婦、寡夫 27万円 26万円
特別の寡婦 35万円 30万円

未婚のひとり親は寡婦控除・寡夫控除の対象外

ひとり親を税制面から支援する寡婦(夫)控除ですが、法律婚が前提です。

そのため、婚姻関係がないまま親となった未婚のひとり親は、控除の対象とならず、税制優遇の恩恵を受けることはできません。

しかし、未婚のひとり親は、婚約破棄や相手が妊娠の事実を知って逃げてしまったなど、望んでそうなったわけではないケースも少なくありません。

また、子どもの貧困が問題となっている昨今、
「婚姻歴の有無で子どもに不利益が及ぶのは不公平ではないか」
という意見もあります。

そこで、ここ最近は「未婚のひとり親にも税制面での支援を」という声が、大きくなっていました。

参考 「未婚のひとり親」より「離婚したひとり親」が税金優遇 不平等の解消を阻むものは?子育て世代がつながる | 東京すくすく – 東京新聞 ■ スポンサー広告 ■

公的サービスの不公平を是正する寡婦控除・寡夫控除の「みなし適用」

この未婚のひとり親家族への不公平を是正するため、採用されたのが、寡婦(夫)控除の「みなし適用」です。

「みなし適用」とは、寡婦(夫)控除が適用されない未婚のひとり親であっても、行政サービスを受けるにあたり、寡婦(夫)控除相当分を所得から減額した上で、料金や利用の査定を受けることができるという制度です。

「みなし適用」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

寡婦控除・寡夫控除の「みなし適用」ご存知ですか?未婚のひとり親なら知っておきたいマネー知識

制度にあたっては、市町村等への申請が必要になります。

ただし、これはあくまで公的サービスを受ける上での制度であり、税金の額が減るわけではありません。

単身児童扶養者(未婚のひとり親)の住民税の非課税措置

そして、平成31年度税制改正で、未婚のひとり親に対する住民税の非課税措置が実現することになりました。

限定的とはいえ、未婚のひとり親への税優遇について、一歩前進したといえる改正でした。

では、その改正の内容を見てみましょう。

今は、法律婚の配偶者と死別又は離婚したひとり親が、前年の年収204万円(合計所得金額125万円)以下の場合に、住民税が非課税になります。

未婚のひとり親には、現状はこの住民税の非課税の適用がなかったのですが、2020年の所得に対する住民税(2021年度分)から適用されることになりました。

要件は、前年の年収204万円以下(ただし、給与所得控除の改正で、合計所得金額は『135万円以下』に変わります)、児童扶養手当の受給者であること、事実婚状態でないことなどです

非課税の適用を受けるには、2020年(令和2年)以降の年末調整の際、扶養控除等申告書「単身児童扶養者」欄に所定の事項を記入します。

【年末調整】2019年(令和元年)から変わる書類、2020年(令和2年)から加わる新書類

確定申告をする場合は、まだ書式は公表されていませんが、申告書の「住民税に関する事項」欄に同様の事項を記入をすることになると思われます。

まとめ

未婚のひとり親の税制の最新事情についてお伝えしました。

・未婚のひとり親は、寡婦(夫)控除の適用はなし
・公的サービスを受ける際に、寡婦(夫)控除の「みなし適用」がある
住民税の非課税措置については、2020年の所得に対する住民税(2021年度分)から

きむら

住民税の非課税措置は、未婚のひとり親の方にとって、税制面で一歩前進だったといえるでしょう。
未婚のひとり親の方も、1年でも早く、寡婦(夫)控除が利用できるようになることを願っています。