こちらの記事は、 税理士に申告や顧問の依頼をしていないフリーランス(個人事業主)や経営者向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
起業した人にとって「税務調査」は、緊張するし、できることなら避けたいものの1つではないでしょうか。
きむら
税務調査の誤ったイメージ
ある日ある朝、いきなり会社に何人もの調査官がやってきて、会社の机やら金庫やらを片っ端から探り、経営者に厳しい質問を浴びせる…。
私も税理士事務所に勤める前は、税務調査にこんなイメージを持っていました。これは映画「マルサの女」の影響ですね。
ところがあの映画の中の調査は、巨額で悪質な脱税を摘発するための「強制調査」(査察)であり、普通の調査とは全く違うものです。ご安心ください!
税務調査の実態はこうだ!
普通の調査は「任意調査」です。基本的には、まずは事前に通知がなされます。
一部、飲食店等現金商売については、現金調査ということで突然税務調査が入るケースもありますが、そういった場合でも営業に支障がある場合は後日に変更することができます。
普通の調査はあくまで納税者の任意に基づいて行われ、「マルサの女」のシーンのようなムリな調べ方はされません。
調査日数は会社の規模によりますが、2日~数日間程度。個人事業主であれば、半日〜1日ということも多いです。
税務署側の人員は、中小企業相手の調査であれば、2人一組でやってくるのが通常。小さな企業や個人事業主の場合は、1人でやってくることも。
調査内容は、納税者の申告内容を帳簿等で確認し、誤りがあれば是正を求めるといったものなので、税務調査の間は、心配ごとがなければ必要な書類を別室で見てもらい、あとでまとめて質問時間を設けてもらう等すれば、始終張り付いている必要はありません。
税務調査は脱税をしていなければ、全く怖がる必要はないのです。
■ スポンサー広告 ■税務調査が入るタイミングや頻度
とはいえ、出来ればなるべく来てほしくない税務調査。いったいどれくらいの頻度で、どんなタイミングで来るものでしょうか?
一般には「5年に一回くらい」と言われていますが、私の経験だと
税理士きむら
というのが正直な感想。
税務調査はたいてい3年度分を調べるので、
「開業して3期分の申告を出さないと、調査には来ない」
とか
「税務署側も数日の間、人を貼り付けるわけだから、費用対効果を考えて、追徴税額がいっぱい出るような、黒字のところにしか入らない」
などと、まことしやかに言われています。
まず、個人事業主は、10年に一度入るか入らないかです。事業規模や業種によって多少変わることはありますが。頻度はそう多くないです。
会社(法人)の場合、3年に一度必ず調査が来る会社もあれば、10年に一度来るか来ないかという会社もあります。
中には、設立して10年以上が経過しそこそこ利益も出ているのに、一度も調査に入られていないという会社もあったりします。
というのも、税務署は、会社によって調査の頻度に濃淡をつけているから。
過去の税務調査や申告の内容により、多額の不正が見込まれる会社・不審な点が多い会社は、かなりの頻度で入られることになります。目をつけられれば、設立1〜2年であっても調査にやってきます。
他にも大きな設備投資があったり、経営者や事業規模などに大きな変化があったり、決算書の売上や利益が大きく変動していたりすると、税務調査に入られる傾向があるようです。
そして、個人事業主・会社の双方に言えることですが、利益が出ていなくても、源泉徴収のし忘れ・印紙税の貼り忘れ・消費税など、利益に関係なく追徴できる税金はいくつかあるので
「ウチは赤字経営だから、税務署には入られない」
と、油断はしていられないことも、この際、おぼえておきましょうね!
税務調査の基本心得7ケ条
税理士がついている(税理士が税務代理権限を有する)納税者の場合には、まず、税務調査の前に、税理士に連絡があります。
ところが、税理士に依頼していないフリーランス(個人事業主)や経営者の場合は、納税者本人に、ある日いきなり連絡があります。初めての方は、ここでのっけから慌ててしまうんですよね。
そこで私から、そういった方にむけて、税務調査の基本心得を7つほど。
1)日程は希望を主張して構わない
税務署側から連絡があると、いきなり「◯日と△日に」などと日時指定してくることがありますが、仕事で都合が悪ければ、こちら側の要望を伝えて大丈夫です。それで心象が悪くなるようなことはありません。
2)何の調査か聞きましょう
慌ててしまって、案外聞き忘れるのがここ。担当部門と、担当者の名前、そして、何の調査かは簡単に聞いておきましょう。個人の事業の調査かと思いこんでふたを開けてみたら、資産税(相続や譲渡)の調査だったということもあったりします。
3)当日、何名で、どの役職の人が来るか聞きましょう
調査に何人で来るかも、聞いておくといいですよ。
個人事業や中小企業の場合、1〜2名であれば、まあ、普通の調査です。これが3名以上なんてことになれば
「ヤバイ。相手も、やる気だ・・・」
という推察が成り立ちます。
あと、役職も聞いておきましょう。一般の方には耳慣れない言葉なのですが、事務官→国税調査官(通称チョウサカン)→上席国税調査官(通称ジョウセキ)→統括国税調査官(通称トウカツ)で、位が上になっていきます。
位が上のほうが困難な事案を扱う傾向にあるので、来るメンバーの役職によって、ガチな調査なのかそうでないのか、ある程度推察がつきます。
4)必要なものは聞いておきましょう
税理士に依頼していない場合は、調査の際にどのようなものを準備すればいいのか、わかりませんよね。遠慮なく、税務署の人に聞いちゃってください。
税務署って、調査に協力的な態度をとる人には、とても優しいんですよ。これホント。
5)調査だけ税理士の助けを借りることも可能
という方は、調査立会いだけ税理士に依頼することも可能です。最近は、単発の税務調査対応に力を入れて特化している税理士もいたりします。
6)お茶菓子やお弁当の用意は不要
調査当日、税務署の方々は、みごとなまでにお茶菓子や食事は辞退されます。公務員ですからね。
お茶やお水は出されたものを召し上がることが多いので、水分(アルコールを除く)くらいは出しても大丈夫です。
7)「お土産」は無くていい
「税務署には、何らかのお土産(税額が出る修正)を持たせないといけない」
などと、経営者の仲間うちで聞いたことがありまけんか?でも、決してそんなことはありません。
特に最近は、公務員として「適正な申告に導く」ことを目的として税務調査を行う傾向が、徹底しているように感じます。
だから、「お土産」が無いからといって目をつけられることもないし、「お土産」を持たせればさっさと税務調査が終わるなんてことも、ありません。
まとめ
きむら