こちらは、税法用語に詳しくなりたい、経営者や経理担当者向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
税理士きむら
税務や経理の現場で、しばしば聞く言葉「中小企業」。そして、「中小企業」に適用される税制や優遇が多々あることも、実務に携わる方はお気づきのことでしょう。
ところでこの「中小企業」、法律や制度によって、定義や範囲が異なることをご存知ですか?
そこで「中小企業」の定義が、各法律や制度間でどのように違うのか。早速見てみましょう!
よろしければ、最後までお付き合いください。
中小企業基本法の「中小企業者」
中小企業基本法に定める「中小企業者」の定義は図表のとおりとなっています。
業種 | 中小企業者 (下記のいずれかの要件を満たすこと) |
小規模企業者 | |
資本金の額又は 出資の総額 |
常時使用する 従業員の数 |
常時使用する 従業員の数 |
|
①製造業、建設業、運輸業、その他の業種(②~④を除く) | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
②卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
③サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
④小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
業種ごとに定義が異なることと、判断基準が2つ(資本金の額と従業員の数)あることが特徴です。
中小企業基本法に定める「中小企業者」に該当すると、中小企業庁が窓口となっている経営・金融・財務等に関する様々な中小企業施策を受けることができます。
参考 トップページ中小企業庁ただし、この中小企業者の定義は、基本的な施策対象の範囲を定めたあくまで原則に過ぎません。
各法律や支援制度においては、別の細かい要件を定めている場合があるので、施策を受けようとする場合には、必ず各窓口等で確認をするようにしましょう。
また、「中小企業者」とは別に、中小企業基本法では「小規模企業者」についても定義されており、小規模企業者向けの施策も別途用意されています。
法人税法の「中小法人」
法人税法の「中小法人」とは次に掲げる法人のことをいいます。
- 普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下
ただし、次の法人は、資本金が1億円以下であっても中小法人とはなりません。
①大法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人)、相互会社等の100%子会社
②完全支配関係(100%出資関係)にある複数の大法人に発行済株式等の全部を直接または間接に保有されている法人
⑤相互会社、投資法人、特定目的会社、受託法人 - 資本もしくは出資を有しない法人
法人税法上の「中小法人等(中小法人、公益法人等、協同組合等、人格なき社団等)」については、低い法人税率が適用されたり、繰越欠損金の8割制限が課せられなかったり、法人税法上有利な取り扱いが適用されます。
税法用語の意味がわかるブログ(8)「青色申告」税法用語の意味がわかるブログ(10)「実効税率」 ■ スポンサー広告 ■租税特別措置法の「中小企業者」
租税特別措置法上の「中小企業者」も、法人税法の「中小法人」と同じく、資本金の額または出資金の額(資本等)が1億円以下の法人をいい、該当すれば租税特別措置法上有利な取り扱いをするものです。
ただし、
- 同一の資本金等の額が1億円を超える法人等(大規模法人)に発行済株式等の2分の1以上を直接所有されている法人
- 大規模法人に発行済株式等の3分の2以上を直接所有されている法人
- 資本や出資を有しない法人、個人事業主のうち常時使用する従業員の数が1,000人超の法人
- 3年間平均15憶円を超える所得を得ている法人(平成31年4月1日以後に開始する年度より)
こういった法人等は除かれます。この部分が法人税法の中小法人と微妙に違います。
・大法人(資本金等5憶円以上の法人、一定の相互会社、受託法人)の100%子会社
・100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人
まとめ
税理士きむら
例えば、自社の資本金が1億円以下であって、資本金2億円の法人に支配されている場合、租税特別措置法の「中小企業者」には該当しませんが、法人税法上の「中小法人」に該当します。
「我が社は、法人税では中小法人だから、租税特別措置法の中小企業者向けの優遇措置も受けられるに違いない」
などと思いこまず、定義は都度確認するようにしましょう!
※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして記載しています。