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税法用語の意味が分かるブログ(26)「売買目的有価証券」

株評価に頭を悩ます社長

こちらは、税法用語に詳しくなりたい、経営者や経理担当者向けの記事です。

株評価に頭を悩ます社長

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。

不定期連載「税法用語の意味がわかるブログ」第26回目です。

みなさんの会社が余剰資金を「寝かせておくのはもったいない」と、上場株式等に投資していたとしたら。決算時、それらの含み益や含み損は、どう処理するのでしょうか?

税理士きむら

相場があるものは時価がはっきりしていることから、いかにも評価益や評価損を計上しなくてはいけなさそうな気がしますよね。

保有目的により評価方法が異なる有価証券

会社の決算に際しては、検討すべきことがいくつかあります。

その一つが資産評価です。

法人税法では債権や棚卸資産など、留意すべき資産評価のルールがいくつかありますが、その中の1つが上場株式等の「取引相場のある有価証券の評価」です。

上場株式など、相場がはっきりしていることから、いかにも評価益や評価損を計上しなくてはいけなさそうな気がします。

ところが、有価証券は保有目的により評価方法が異なります

売買目的なら時価で評価、売買目的外なら原価で評価

「売買目的有価証券」であれば、期末において、時価と簿価の差額を評価損・益として認識します。

売買目的外有価証券ならば、株価が回復する見込みがないなど著しく低下した場合(2年間にわたり50%以上下落等)を除き、原則は簿価で評価することになります。

つまり「一時的に株価が下がっているから評価損を出して、事業の利益と相殺しよう」と考えても、会社が保有している株式等が売買目的外有価証券であれば、評価損を損金にするのは難しいということです。

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売買目的有価証券の要件「専担者が売買」

では、「売買目的有価証券」とはどういったものかというと、いくつか要件があります。

まず「短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的で取引を行ったもの(専担者売買有価証券)」でなくてはなりません。

これは、いわゆるトレーディング目的で取得された有価証券で、会社の内部に専門的に短期売買目的で取引を行う部署があり、そのトレーディング業務で取得された有価証券のことをいいます。

「取得日帳簿記載要件」もアリ

トレーディング担当者もいないし。当社の保有株式は「売買目的有価証券」に該当しないな、こりゃ。

社長

おっと。それ以外にも要件があるんですよ。

専担者売買有価証券に該当しなくても、会社が取得した日に短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載した場合には、時価評価することができます

ただし、あくまで「取得した日」に帳簿記載することが条件ですから、前期の決算で評価益を出したくないから売買目的外として処理し、今期は評価損が出たから売買目的とする…といったことは出来ません。

まとめ

税理士きむら

上場株式のように取引相場のある有価証券であっても、「売買目的有価証券」でなければ、評価損益は認識できません。
売買目的外有価証券の場合は、時価の著しい下落があった場合のみ、評価損を計上できます。

もちろん、有価証券を期末までに売買することで益出し・損出しさせたなら、それは実現した収益・費用ということで、会社の益金・損金になります。

売買目的外有価証券の含み損益を確定させたい場合には、期末までに売却することも、決算の検討事項になります。

※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして記載しています。

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