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税法用語の意味が分かるブログ15「みなし役員」

こちらは、税法用語に詳しくなりたい、経営者や経理担当者向けの記事です。

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。

不定期連載「税法用語の意味がわかるブログ」第15回目です。

法人税法上の役員の範囲は、会社法の役員の概念よりも広いんです。会社経営に携わる方は、是非、このことはおぼえておきましょう。

きむら

登記事項証明書に載っている取締役・監査役・会計参与だけでなく、会社の経営に従事している一定の人も、税金の世界では役員に含まれます(みなし役員)。
みなし役員になったとすると、一体、どんなデメリットがあるのでしょうか。

「みなし役員」に該当する人

役員でないのに、税法上、役員と同じ扱いを受けてしまう「みなし役員」。

「みなし役員」に該当する人は、次のような人たちです。

  1. 社員以外で、相談役や顧問等に該当し、かつ、経営に従事している人。
  2. 社員で「特定株主」に該当し、かつ、経営に従事している人。

このいずれかに該当すると、税法上は役員として扱われることになります。

「経営に従事している」とは?

「みなし役員」に該当する人の要件に共通している、「経営に従事している」とは、どういったことをいうのでしょうか?

会社の主要な業務執行の意思決定に参画し、自分の意思を表明し反映させていれば、「経営に従事している」ということになります。

会社の主要な業務執行とは

  • 職制の決定
  • 販売計画
  • 仕入計画
  • 製造計画
  • 人事計画
  • 資金計画
  • 設備計画 等

たとえば、人事を担当していて社員の任免や給料・賞与の決定をしていたり、財務を任され銀行の融資担当者と交渉をしていたり、会社の新規事業について何らかの意思決定をしていたりする場合は、「経営に従事している」とされる可能性があります。

経理担当者で試算表を作っている・請求書を出している・給与計算をしているとか、営業担当で新規の顧客開拓をしているといった程度であれば、経営に従事しているということにはなりません。

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「特定株主」とは?

「みなし役員」に該当する人の要件のポイントの1つである「特定株主」とは、判定の対象となる人が、次の要件をすべて満たす場合のその人をいいます。

  1. 本人とその配偶者の持株割合の合計が5%超
  2. 本人の属する株主グループ(親族などを含めたグループ)の持株割合が10%超
  3. 株主グループの持株割合の1位から3位を合計して50%超となり、本人がその株主グループのいずれかに含まれている

「みなし役員」が実務で問題になるケース

税法上、役員として扱われることになると、この「みなし役員」に対して払う給与は、役員給与の損金算入・不算入や、過大な役員給与損金不算入等の適用受けることとなります。

税法用語の意味が分かるブログ14「役員給与」

ここが、会社経営上、注意しなくてはならないポイントです。

たとえば、社長が100%株式を保有しているとして、その社長の妻が社内で働いていたとします。妻は会社法上は役員ではありません。でも…

なあ、お前。そろそろ従業員のAくんの給与をアップしてあげたいと思うんだが。

社長

そうよねえ。彼、本当にがんばってるし、新規の顧客もどんどん開拓してくれてるわ。◯万円くらい上乗せしてもいいんじゃないかしら。

こんな感じで社長の相談に、日々乗っていたとしましょう。

まず、妻自身は株主ではありませんが、特定株主に該当することになります(夫である社長が100%株主だから)。

そしてその妻に賞与を支給していたとしたら…。

妻は会社の経営方針についてバシバシアドバイスしていますから、税務調査が入った場合、妻はみなし役員とされ、賞与は税務上の費用ではない(損金不算入)とされる可能性があります。

親族が会社の従業員という場合には、税務調査で「みなし役員」かどうかが論点になりやすいので要注意ですよ!

まとめ

このように、家族経営の会社の場合、配偶者や親族が「みなし役員」に該当してしまうケースは、案外多いもの。

きむら

 「みなし役員」に該当すると、毎月の固定給のみが損金になります(ただし適正額であること)。
賞与を支払っても損金にならないので、注意が必要です。

※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして記載しています。

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