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税法用語の意味がわかるブログ(31)「消費税の免税事業者」

消費税の免税事業者

こちらは、フリーランス・副業をしている方・小規模な事業をしている方向けの記事です。

小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。

不定期連載「税法用語の意味がわかるブログ」、第31回目は「消費税の免税事業者」についてお送りします。

日本国内の事業者が、物品を販売したりサービスを提供する際には、その販売価格には消費税が上乗せされます。

この消費税を預かった事業者は、原則として決算日から2ヵ月以内に消費税を申告・納税する必要があります。ところが…

税理士きむら

一定の要件を満たす小規模な事業者は、消費税の納税義務を免除されます。このような事業者を、消費税の免税事業者と呼びます。

「小規模な事業者」って、どれくらいのレベルの事業者が免税事業者になるの?
消費税を納めなくていいなんて、免税事業者って、美味しいんじゃない?

などなど、色々と疑問は尽きないですよね。早速、消費税の免税事業者について、見ていきましょう!

消費税の免税事業者の要件

消費税の免税事業者の要件は、ちょっと複雑です。

というのも、一定期間の課税売上高等で判断したり、設立当初の法人の場合は資本金の額により判断するなど、判断の基準がいくつもあるからです。

具体的には、次の1. ~5. のいずれかの要件を満たした事業者は課税事業者に該当することとなり、免税事業者にはなりません。

  1. 基準期間(通常は2事業年度前。個人であれば2年前)における課税売上高が1,000万円超である。
  2. 特定期間(通常は法人はその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間。個人であればその年の前年の1月1日から6月30日まで)における課税売上高(もしくは給与等支払額)が1,000万円超である。
  3. 設立から2年以内の法人で、期首の時点において、資本金の額または出資の金額が1,000万円以上、もしくは、課税売上高5億円の会社の子会社である。
  4. 消費税課税事業者選択届出書を提出している。
  5. 相続・合併・分割等の納税義務の免除の特例により課税事業者となる。
MEMO
課税売上高は、免税事業者であった期間の売上高であれば税込額で、課税事業者であった期間の売上高であれば税抜額で判定します。

開業してしばらくたった事業者であれば
「2期(2年)前の課税売上高が1,000万円以下であればだいたい免税事業者となるが、特定期間の判定もあるため、前期(前年)の上半期の売上高にも注意」
と、覚えておきましょう!

免税事業者でも販売価格に消費税を上乗せして構わない

ところで、実務で次の質問をよく受けます。

「消費税の免税事業者は、販売価格に消費税を上乗せしてもいいの?」

税理士きむら

答えはズバリ、免税事業者であっても、消費税を価格に上乗せして構いません

なぜかというと、消費税法に関する法令や通達には、免税事業者が消費税を上乗せしてはならないとは一切規定されていないから。また、免税事業者といえども、事業を行う上で支払をする際には消費税を支払っている(消費税を負担している)からです。

これらの理由から、消費税の免税事業者であっても、価格に消費税を上乗せして良いことになっています。

だから、取引先が免税事業者だからといって

消費税を納めてないんだろ?価格に消費税は上乗せしないでくれ。

と依頼することはできませんし、そのような要求をしてしまうと、場合によっては消費税転嫁対策特別措置法違反になってしまいますよ。

ちなみに、免税事業者に対して仕入や経費等の支払いをした場合でも、消費税の申告の際、その対価に含まれる消費税額相当額を控除(仕入税額控除)することができます。ただし2023年9月までは。。。(詳しくは次の免税業者のデメリットで)

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免税事業者のデメリット

『消費税を価格に上乗せしできるし、預かった消費税は納税しなくていいし。なんだか消費税の免税事業者ってオイシイな…。』

ここまで読んで、そう感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。

ところが、一概にそうは言えないのです。

免税事業者は還付申告ができない

消費税は原則として、売上先から預かった消費税から、仕入や経費等の支払いに含まれている消費税を控除した残額を、税務署に納めることになっています。
 
もし、支払いの消費税のほうが売上等の消費税より多かった場合は、払いすぎた消費税分を、税務署が還付してくれることになります(還付申告)。

ところが、免税事業者は申告をする義務もないかわりに、還付申告をすることもできません

支払いが過多となった事業年度に還付申告ができないことは、免税事業者の1つのデメリットであるといえます。

2023年10月以降は免税事業者受難の時代?

そして2023年10月1日以降は、免税事業者は「うまみ」を享受しづらくなります。

というのも、2023年10月1日以降、免税事業者から物を買っても仕入税額控除ができなくなる(正確には、2023年10月以降から段階的に縮小されて2029年10月に完全廃止)からです。

このことから、免税事業者は取引を避けられることが予想されます。詳しくは以前書いたこちらのエントリーをご覧ください。

税法用語の意味が分かるブログ(29)消費税の「インボイス方式(インボイス制度)」

この「免税事業者離れ」を回避するには、方法が2つ。

・消費税課税事業者選択届出書を提出して、あえて課税事業者になるか
 もしくは
・売上先の負担を避けるべく、消費税の上乗せ請求をやめるか

つまり、取引先を失うリスクがある場合は、「預かった消費税は納税しなくていい」という免税事業者の「うまみ」を捨てなくてはいけない時代まで、あと数年ということ。

2023年10月1日に向けて、消費税免税事業者(売上高1,000万円以下の事業者)は、何かと悩むことになりそうです。

まとめ

税理士きむら

・消費税の免税事業者は判定がちょっと複雑だけれど、「2期(2年)前の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者」とおぼえておけば、まず大抵の場合はOK
・免税事業者も消費税を価格に上乗せして構いません
・免税事業者から物を購入したり役務提供を受けても、仕入税額控除できます(ただし、今のところは…)

といったところが、実務のポイントです。あと、免税事業者のデメリットも、この機会におさえておきましょう。

※「税法用語の意味がわかるブログ」は、研修出版「月刊経理ウーマン」に連載中の「税法用語の意味がわかる辞典」をリライトして記載しています。

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