こちらは、平成30年の年末調整の書類を記入する、サラリーマン・バイト・パートの方向けの記事です。
小さな相続専門税理士のきむら あきらこ(@k_tax)です。
このページでは平成30年分のマル扶(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書)の具体的な書き方を、徹底解説しています。
この書類は平成29年の年末調整で配布される書類の1つですが、年末調整の時だけでなく、平成30年1月1日以降に就職した方や転職した方は、みんな入社の際、マル扶を記入することになります。
また、中途入社された方の中には、平成30年の年末調整の際、勤め先から平成31年分(2019年分)と合わせてまとめて提出するよう言われる方もいらっしゃることでしょう。
税理士きむら
書き方を詳しく見ていきましょう!
平成31年(2019年)分のマル扶の書き方を調べたい方はこちらからどうぞ。
マル扶(扶養控除等申告書)をしっかり書くことは最も身近な税金対策
マル扶(扶養控除等申告書)は、なぜ誰もが書かねばならない書類なのでしょうか?
書くと、何かいいことがあるのでしょうか?
各種の控除を受けることができる
所得税には、個人の生活事情を考慮して、扶養控除等の各種所得控除があります。
その各種控除により、納める税金を軽減することができます。
確定申告をする場合は、申告書に所得控除に必要な事項を書きますが、サラリーマンはマル扶を書くことで、次の控除を受けることが可能になります。
源泉所得税が少なくなる
給料からは源泉所得税が差し引かれますが、甲欄源泉と乙欄源泉の2種類の差し引き方があります。
甲欄源泉は、扶養者の人数が多いほど、源泉所得税が少なくなる源泉方法です。
乙欄源泉は、甲欄源泉より多めに所得税を差し引く源泉方法で、扶養者の人数が多くても源泉所得税が少なくなることはありません。
だとすれば、甲欄で源泉徴収してもらいたいですよね!
甲欄で源泉徴収してもらうためには、マル扶を提出してもらうことが要件になっています。
マル扶の提出がなければ、どんなにお給料の額が少なくても、高い税率の乙欄で源泉をしなくてはならないのです。
税理士きむら
どうですか?めっちゃ書く気が起きてきましたよね。
それでは、ブロックごとに、マル扶の書き方を解説していきます。
「基本情報」の欄
所轄税務署長等
ここは、勤め先の所轄税務署名を書く欄です。基本的に勤め先が記入する個所なので、空欄で配られたとしても、書く必要はありません。
間違っても、あなたの住所の税務署名を書かないように。
市区町村長
ここは、あなたが住んでいる市区町村を記入します。
マル扶(扶養控除等申告書)は住民税を計算するための資料でもあるので、勤め先の所在地ではなく、あなたの住所地の市区町村名を書くようになっています。
給与の支払者の名称(氏名)
あなたの勤め先が会社なら会社の名称、個人事業者であれば氏名や屋号を書きます。
基本的に勤め先が記入する個所なので、配られた時にプリントされているかゴム印が押されていることが多いです。
給与の支払者の法人(個人)番号
勤め先が記入する欄なので、スルーしてください。誤って、自分のマイナンバーを書かないように!
給与の支払者の所在地(住所)
あなたの勤め先の所在地、住所を書く欄です。
「給与の支払者の名称(氏名)」同様、基本的に勤め先が記入する個所なので、配られた時にプリントされているかゴム印が押されていることが多いです。
あなたの氏名・フリガナ・(印)
ここで重要なのは、フリガナを忘れずに書くこと。
そのフリガナが、源泉徴収票や給与支払報告書にも記載されることになります。
フリガナを書かなかったのに、後になって
「(源泉徴収票等に記載されている)フリガナが違います!」
と、文句を言わないように(笑)。
ハンコは、実印である必要はもちろんありませんが、シャチハタ以外のハンコを押しましょう。
よくある間違いが「給与の支払者受付印」の欄にうっかりあなたの印を押してしまうこと。「給与の支払者受付印」は、勤め先がハンコを押す場所なので、押さないようにしましょう。
あなたの個人番号(マイナンバー)
ここは、勤め先の指示に従うようにします。
なぜなら、勤め先によっては事前に別の方法でマイナンバーを収集していて、扶養控除等申告書へのマイナンバーの記載を省略できるからです。
とにかく、マイナンバーは「ムダに書かない」という意識を持つこと!
今ひとつ指示が不明確な場合は、しっかり確認するようにしましょう。
あなたの住所又は居所、あなたの生年月日
平成30年1月1日現在の住所を書きます。
もしも、12月31日までに引っ越すのであれば、その引っ越し予定の住所を書きます。
年の途中で入社して、新しい会社でマル扶を書く場合は、入社時点の住所を書きます。
生年月日は、和暦で書くようにしましょう。これは、配偶者や親族について書く場合もです。
税理士きむら
世帯主の氏名、あなたとの続柄
世帯主があなた自身の場合は、
「世帯主の氏名」には自分の名前を書き、
「あなたとの続柄」のところには「本人」と書きます。
世帯主があなた以外の人である場合には、それぞれ次のように書きます。
世帯主があなたの | 世帯主の氏名 | あなたとの続柄 |
夫 | 夫の氏名 | 夫(または配偶者) |
妻 | 妻の氏名 | 妻(または配偶者) |
父 | 父の氏名 | 父(または親) |
母 | 母の氏名 | 母(または親) |
子 | 子の名前 | 子(または長男、長女など) |
「続柄」を逆に書いてしまう方をよく見かけるので(自分から見た続柄ではなく、世帯主から見た自分の続柄を書いてしまう)、表にしてみました。
配偶者の有無
配偶者がいれば「有」にマルを、いなければ「無」にマルをつけます。
この欄は 、あなたの配偶者が配偶者控除の対象かどうかに関わらず、婚姻関係にある配偶者がいるかどうかでマルをつけます。
従たる給与についての扶養控除等申告書の提出
ここはたいへんレアケースです。
私も20年以上この業界にいて、ここに記入するケースに出会ったことはありません。
念のため解説をすると、例えば、あなたがダブルワークをしていて、サブ的に勤めている勤め先に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を出している場合に「◯」をつけるという、そんな欄です。
だから、ここの欄は基本的にスルー。空欄でOKです。
給与の支払者受付印
あなたの勤め先が、マル扶を「受け取りました」という、受付印を押す個所です。空欄のまま提出しましょう。
■ スポンサー広告 ■「A 源泉控除対象配偶者」と「B 控除対象扶養親族」の欄
A 源泉控除対象配偶者の欄
源泉控除対象配偶者とは、次の要件を満たす配偶者のことです。
- 本人の給料年収1120万円(合計所得金額900万円)以下
- 本人と生計を一にする配偶者の給料年収150万円(合計所得金額85万円)以下
- 青色事業専従者として給与の支払を受けていない、または、白色事業専従者でない
源泉控除対象配偶者に該当すると、毎月の給料から天引きされる源泉所得税は、「扶養親族等が1人いる」ものとして計算されます。
つまり、源泉控除対象配偶者がいる場合、毎月の源泉徴収税額は、その分少なくなります。
あなたの年収が1120万円を超えるかどうかは、平成30年の見込みで判断します。
配偶者が給料年収150万円(合計所得金額85万円)以下かどうかも、平成30年の見込みで判断します。
あなたや配偶者の年収・所得が、結果として見積もりを外れても、気づいた時点や確定申告で是正することができますので、ナーバスにならなくても大丈夫ですよ。
以下は、「A 源泉控除対象配偶者」「B 控除対象扶養親族」に共通の、記入する際のポイントです。
- パート・アルバイト・社員などの給与所得者であれば、所得の見積額は、見込みの給与収入から65万円を引いた額を、記入します。
(例)見込みの年収120万円の場合
120万円 − 65万円 = 55万円 …平成30年中の所得の見積額
- 判定の結果、要件を満たして「源泉控除対象配偶者」の対象となる場合は、配偶者の名前とフリガナを記載します。
- マイナンバーについては、勤め先の指示に従ってください。
- 住所は、同居しているなら「同上」と書きます。
- 「非居住者である親族」と「生計を一にする事実」という欄は、配偶者が海外に居住している場合に書く欄なので、該当しない限り、何も記入する必要はありません。
B 控除対象扶養親族(16歳以上)
控除対象扶養親族とは、次の要件を満たす親族のことです。
- 配偶者以外の親族で
- 納税者と生計を一にしていて
- 年間の合計所得金額が38万円以下で(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色事業専従者として給与の支払を受けていない、または、白色事業専従者でない
- 16歳以上
扶養親族は、年齢に応じて控除額が異なります。
扶養親族の種類 | 年齢 | 控除額 |
(年少扶養親族) | 16歳未満 | 控除なし・控除対象扶養親族に該当しない 「住民税に関する事項」の欄に記入 |
一般の控除対象扶養親族 | 16歳〜18歳 23歳〜69歳 |
38万円 |
特定扶養親族 | 19歳〜22歳 | 63万円 |
老人扶養親族 | 70歳以上 | 同居老親等 58万円 その他 48万円 |
それでは、扶養親族の種類ごとに、その内容と書き方を見ていきましょう。
年少扶養親族(控除対象扶養親族には該当しません)
平成30年分のマル扶(扶養控除等申告書)の場合、
・平成15年1月2日以後に生まれた親族(16歳未満)
が該当します。
所得税の控除はないので、ここに記入はせず、「住民税に関する事項」に氏名などを記入します。
一般の控除対象扶養親族
平成30年分のマル扶の場合、
・平成12年1月2日以後平成15年1月1日以前に生まれた親族(16歳以上19歳未満)
・昭和24年1月2日以後平成8年1月1日以前に生まれた親族(23歳以上70歳未満)
が該当します。
控除額は38万円です。
特定扶養親族
平成30年分のマル扶の場合、
・平成8年1月2日以後平成12年1月1日以前に生まれた親族(19歳以上23歳未満)
が該当します。
この世代は大学生にあたる年齢で、「お金もかかるだろう」ということで、控除額は63万円と多めになっています。
該当する際は「特定扶養親族」の欄に「✔️」をいれます。
老人扶養親族
平成30年分のマル扶の場合、
・昭和24年1月1日以前に生まれた親族(70歳以上)
が該当します。
老人扶養親族は、同居の有無等で控除額が2つに分かれます。
同居老親等
扶養している親族が
・自分または配偶者の親・祖父母で、
かつ
・同居している場合
は同居老親等に該当し、控除額は58万円になります。
該当する際は「同居老親等」の欄に「✔️」をいれます。
同居老親等以外
扶養している親族が
・親・祖父母以外の場合
または
・親・祖父母であっても別居(※)している場合
は、控除額は48万円になります。
該当する際は「その他」の欄に「✔️」をいれます。
こちらは
木村文紀・・・一般の控除対象扶養親族
木村聡司・・・特定扶養親族
木村鞆子・・・同居老親等
木村太郎・・・同居老親等でない老人扶養親族
の場合の記載例です。
所得の見積額や住所等の書き方については、「源泉控除対象配偶者」の項の「配偶者・扶養親族、記入のポイント」をご確認ください。
「C 障害者、寡婦、寡夫、または勤労学生」の欄
障害者
障害者控除は、あなたが障害者であっても同一生計配偶者や扶養親族が障害者であっても受けることができるという控除です。
障害の程度が重いと、特別障害者となり控除額が大きくなります。
障害者控除の種類 | 控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
あなたに障害がある場合は、「障害者」欄と「本人」欄に「✔️」を入れます。
同一生計配偶者に障害がある場合は、「障害者」欄と「同一生計配偶者」欄に「✔️」を入れます。同居していて障害の程度が重い場合には、「同居特別障害者」欄に「✔️」を入れます。
同一生計配偶者とは、本人の年収(所得)に関係なく、次の要件を満たす配偶者のことです。
- 本人と生計を一にする配偶者の給料年収103万円(合計所得金額38万円)以下
- 青色事業専従者として給与の支払を受けていない、または、白色事業専従者でない
扶養親族に障害がある場合は、「障害者」欄と「扶養親族」欄に「✔️」を入れ、人数を記入します。
記入例は、扶養親族の1名が、特別障害者である場合です。
「左記の内容」には、対象者の氏名・障害の程度・交付を受けている手帳の種類と交付年月日を書きます。
寡婦・寡夫
寡婦控除・寡夫控除とは、婚姻をしていた女性・男性が、配偶者と離婚や死別したことによりシングルとなり、一定の要件を満たしている場合に受けることができる所得控除です。
控除の種類 | 控除額 |
寡婦 | 27万円 |
特別の寡婦 | 40万円 |
寡夫 | 75万円 |
控除漏れのないよう、まずはこちらの記事で要件を正確に把握しましょう。
寡婦・特別の寡婦・寡夫の要件に該当すれば、各欄に「✔️」をつけるだけで証明書類もなく、控除を受けることができます。
勤労学生
勤労学生控除を受けるために記載する欄です。
控除額 | 27万円 |
勤労学生控除とは、次の要件を満たす場合に受けることができる控除です。
- あなたが学生(小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学の学生、国や地方公共団体、学校法人などが設立した専修学校、各種学校、または職業訓練学校のうち一定の要件を満たす学校の学生)で
- 収入が1つの勤務先からのアルバイト代(給与収入)のみの場合、年収130万円以下
要件に該当する場合は「勤労学生」欄に「✔️」を記入します。
また、証明書類として、学生証のコピーなどを提出する必要があります。
「D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等」の欄
ここの欄は空欄でもけっこうです。と言っても、解説しないと、気持ちが悪いですよね。
例えば、あなたが共働きだったとします。
お子さんは扶養親族の要件は満たしています。が、税法の決まりにより、あなたと配偶者両方の控除対象扶養親族にはできません。
そこで、お子さんを扶養親族としなかったほうが、この欄にお子さんの名前を記入します。
つまり、ここは言わば「ダブって控除しないよう注意をうながす欄」です。
だから、ダブって控除しなければ、ここに書かなくても問題はないですし、書かないと控除が減る(損をする)というわけではないので、空欄でも大丈夫です。
「住民税に関する事項」の欄
平成30年分のマル扶(扶養控除等申告書)には、平成15年1月2日以後に生まれた親族(年少扶養親族)がいる場合に、ここに記入をします。
所得税では年少扶養親族は扶養控除の対象になりませんが、住民税が課税されるかどうかの判断は年少扶養親族も含めてするので、ここに書くようになっています。
平成30年分のマル扶はこちらからダウンロードできます
・平成30年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(PDF)(国税庁ホームページより)
税理士きむら